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階段下りで膝痛がある症例
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
20代の方である。
1か月前にジムに行き、トレッドミルで9Kmほど走った。
翌日は筋肉痛で動けないほどであった。
3日後、階段の下りで膝に痛みが出現した。
痛みは階段の下りのみである。
最近、徐々に痛みは軽減してきたが、未だ大した回復はない。
左膝の痛みは、右足のつま先が床に着こうとする時期である。
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部位は、腓骨小頭の上の前方やや奥で、ズキンとする痛みである。
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但し、圧痛はない。
Q) 原因は?
A) 症例が指し示す部位は、腓骨小頭の上の前方である。
その周辺にある組織として、筋では前脛骨筋、腓骨筋、靱帯では腸脛靭帯、LCL、外側膝蓋支帯などがある。
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Q) そこから、どう考えればよいか?
A) 痛みが出現する時期の階段下りのアライメントから組織を絞り込む。
Q) 前額面と矢状面のどちらを優先して観察するか?
A) 痛みは膝の外側なので前額面から見る。
Q) アライメントは?
A) 左右差から見かけ上の内反膝である。
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Q) 見かけ上で内反であることから組織へのメカニカルストレスは?
A) 外側は広がるので組織の伸張痛が考えられる。
Q) 伸張される組織は?
A) 腸脛靭帯、LCL、膝蓋支帯などである。
Q) どれか?
A) 圧痛がなく不明である。
Q) どうすれば?
A) 大事なのは、痛みを起こす組織を限定することではない。
どのようなメカニカルストレスかを見極めることである。
Q) 見かけ上の内反膝の原因は?
A) 見かけ上の内反膝は膝関節と股関節が屈曲位、股関節外旋位である。
股関節外旋をポイントに考えると
股関節内旋制限
股関節の内旋筋の低下
痛みがある側の骨盤後方回旋
Q) 評価では?
A) 左右差はほぼなかった。
Q) 他には?
A) 膝関節か足関節や足部に問題がある。
Q) どのような関係か?
A) 足の場合、がに股で下りると荷重は足底内側にかかる。
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その場合に必要な力は、足関節外がえしである。
逆に言うと、足関節内返し作用筋の低下があり、それを避けるための動きである。
Q) 評価では?
A) 左右差はなかった。
他に、大腿四頭筋がある。
Q) それは?
A) 右下肢支持の場合では、下る方向と膝関節屈曲方向がほぼ一致するので、膝関節の屈曲を支えるのは大腿四頭筋である。
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左下肢支持では、見かけ上の内反が生じているので
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下る方向と屈曲角度が違うため、膝関節による体重の支えは、大腿四頭筋と膝関節外側組織になる。
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膝関節屈曲の支えは、大腿四頭筋と膝関節外側組織の2つに分かれるため
大腿四頭筋への負担が減る。
大腿四頭筋への負担を減らす戦略が、内反抑制組織に伸張ストレスを与え痛みが生じた。
Q) 評価では?
A) 触診による左右差で、外側広筋の萎縮が確認された。
Q) アプローチの方法は?
A) 膝関節伸展運動で、大腿四頭筋を収縮させながら股関節外転の抵抗運動により、外側広筋を選択的に収縮を促す。
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休憩を含め、5分間実施した。
Q) 結果は?
A) 痛みは減少した。
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Q) 何故、階段の上りではなく下りなのか?
A) 上りは体幹前傾により重心が膝関節に近づき四頭筋の負担は少ない。
下りでは体幹を後傾にするため四頭筋への負担は大きくなる。
そのため、見かけ上の内反を強める。
※以下、推論になります。
脳は、動作を遂行することを第1に考えます。
そのため動作を遂行するための戦略をとります。
それが、痛みなどにつながります。
脳は、その先に起こることまでは読み取れません。
なので、こちらが、その戦略を理解して、対応してあげなければなりません。
※幼児が階段を下りるときも同じ戦略を取り、一段ずつ下ります。
そして、支えている側が利き足になります。
最後に
外側広筋の緊張を高めたあと、階段下りの歩隔が変わりました。
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何故、変わったのか、よろしければ考えてみてください。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。