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『稲盛和夫一日一言』 2月29日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 2月29日(木)は、「土俵の真ん中で相撲をとる」です。

ポイント:何事にも、常に土俵の真ん中を土俵際だという気持ちで臨む。常に安全弁を置き、確実に仕事を進めていくこと。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSION- 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「土俵の真ん中で相撲をとる」の項で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 私はいつも、「土俵の真ん中で相撲をとれ」と言っています。土俵際に追い詰められるまで待たず、余裕を持っているときに行動を起こせ、という意味です。

 誰でも、試験前に一夜漬けをした経験があると思います。そんなときは、たいてい時間切れになり、絶望的な気分で試験に臨まなければならなかったものです。
 試験の日時は予め決まっているのですから、良い成績をとりたいならば、もっと早くから準備を始めるべきなのですが、しかし、たいていはそうしません。

 相撲では、自分の足が土俵際に届いて、今にも土俵の外に放り出されそうになるまで何もしない力士を見かけることがあります。そうなってから、よやく本腰を入れて戦い始める。どうして彼らは土俵の真ん中にいるうちからその力を発揮しないのだろうかと、私は不思議に思っています。

 それはビジネスにおいても同様です。誰でも土俵の真ん中にいるときは、行動を起こすのにまだ十分な時間と余裕があるとリラックスしていますが、いざ土俵際まで押し込まれそうになると、慌てて行動を起こします。

 私たちは、常に時間も余裕もまったくないつもりになって、実際に押し出されそうになる前に、力をふり絞るようにしなければなりません。
 余裕が十分にある段階においても、危機感を持って必要な行動を起こすことが大切です。それが安定した事業の秘訣なのです。
(要約)

 同著の【一問一答】の中で、「土俵の真ん中で相撲をとる」の具体的な例として、名誉会長は次のように述べられています。

 それは例えば、蓄えを十分に持つということです。ビジネスのチャンスを掴もうとするならば、素早く行動できなければなりません。そのために、利益を蓄えて余裕をつくっておく必要があるのです。
 
 NTTに対抗して第二電電を始めようとしたとき、初期投資として少なくとも1,000億円の資金が必要だとわかりました。当時京セラは約1,500億円の銀行貯金を持っていましたので、そのうちの1,000億円を使わせてほしいと役員会でお願いして承認をもらました。

 それが、私が第二電電を始める大きな励ましとなったのです。もしそのような蓄えがなかったなら、あれほど大きなプロジェクトに乗り出すことは難しかったでしょう。(要約)

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)「土俵の真ん中で相撲をとる」の項で、この言葉の意味するところについて、名誉会長は次のように説かれています。

 「土俵の真ん中で相撲をとる」とは、常に土俵の真ん中を土俵際だと思って、一歩も引かない気持ちで仕事にあたるということです。

 納期というものを例にとると、お客様の納期に合わせて製品を完成させると考えるのではなく、納期の何日も前に完成日を設定し、これを土俵際と考えて渾身の力をふり絞ってその期日を守ろうとすることです。
 そうすれば、万一予期しないトラブルが発生しても、まだ土俵際までには余裕があるため、十分な対応が可能となり、お客様に迷惑をおかけすることはありません。

 このように私たちは、常に安全弁を置きながら、確実に仕事を進めていく必要があるのです。

  ”Wrestle in the Center of the Ring."
 これが「土俵の真ん中で相撲をとる」の英訳です。

 「余裕のあるときに全力でことにあたる」
 業績がどんどん悪くなって、このまま本業だけで行ったのではどうにもならない、何か手を打たなければと思っても、そのときには資金力も相当減って体力もなくなっていますから、手を打とうにも打てません。
 他の事業に手を出すのなら、体力のあるときにやるべきです。順調に行っている間は安心して何もせず、悪くなってからようやく手を打とうとするから、条件も悪くなってしまうのです。
 大技をかけようと思うなら、絶好調のときにかける。これが「土俵の真ん中で相撲をとる」という意味なのです。
(要約)

 いろいろな例で解説されていますが、分かりやすく言えば、「土俵際まで追いつめられて、苦し紛れにうっちゃりを打ったりしようとするぐらいの力があるのなら、なぜ土俵の真ん中でその力を出そうとしないのか」ということです。

 「余裕のあるときに全力でことにあたる」
 日ごろからほっこりしていることの多い私にとっては、非常に耳の痛い言葉ですが、待ったなしの状況に追い込まれてしまう前に、少しでも早くアクションを起こすことが習い性となるよう、「To Do」リストを最大限活用して毎日を過ごしていきたいと思っています。


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