『稲盛和夫一日一言』5/21(日)
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5/21(日)は、「理想をめざす」です。
ポイント:最初に到達すべき理想を描き、それに向けてまっしぐらに進んでいく。めざすべき頂きが明確に見えているからこそ、果敢に挑戦し、何があっても登り切ろうとする気力が生まれてくる。
2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)の中で、安易に妥協することなく挑戦し続けることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
私は最初に就職した会社で、自分の信念に基づき行動したため、社内で孤立してしまったことがありました。
そんなとき、周囲と和することが上手で如才(じゅさい)ないある先輩が、こう助言してくれました。
「稲盛君のやり方は、正しさ一辺倒で、ストレートすぎる。だから周囲に理解されないのだ。人生にはいい意味での妥協が必要だ。それは生きていくために不可欠な方便だよ」
それからしばらく、私は先輩から言われた「いい意味での妥協」をすべきかどうか、自問自答を重ねました。
そこで私が出した結論は、「妥協という誘惑には絶対に耳を貸すまい」ということでした。「信念を曲げることなく懸命に働き続けることしか今の自分にはできない」と改めてそう心に誓ったのです。
そのとき私は、高く険しい岩山を垂直に登っていく自分の姿を思い浮かべていました。
登山の技術や経験があるわけではない人間が、パーティーのリーダーとしてメンバーを率いて峻険な岩山をまっすぐによじ登っていく。怖くて足がすくむ者、途中で脱落する者が出てきても無理はありません。安全第一に考えるなら、山すそを迂回しながらゆっくりと登っていく方法もあるでしょう。
しかし、私はそのような安易な道は取らないことにしました。なぜなら、ゆるやかな道を行くという安全策を取った瞬間、めざすべきはるかな頂きを見失ってしまうと思ったからです。忘れないまでも、「理想は理想として、現実にはここまでしか登れなかった。もう十分努力したではないか、ここらでよしとしよう」とあきらめてしまうに違いない、そんな自分の姿が見える気がしたのです。
人生や仕事における困難な山も、安易に妥協することなく、垂直に登り続けていくことが大切です。強い意志を持って、一歩一歩地道な努力を日々継続する人は、いくら遠い道のりであろうとも、いつか必ず人生の頂上に立つことができるに違いありません。(要約)
西南戦争で敗走を重ねた反乱士族は、現在の鹿児島市城山に籠って最後の反抗を試みます。そして、重傷を負い、覚悟を決めた西郷隆盛が腹心の別府晋介に介錯(かいしゃく)を頼んだ際の言葉が『晋どん、もうここいらでよか』というものだったと伝えられています。
鹿児島弁の「ここらでよかろかい」とは、「このあたりでよいでしょう」といった意味ですが、「このあたり」が場所なのか時間なのかは、置かれたシチュエーションによって異なります。
「自分たちはもう十分戦い抜いた。ここらで終わりにしてもいいだろう」との思いで西郷が最期を迎えたのかどうかは知る由もありませんが、反乱の首謀者にならざるを得なかった西郷にとって、西南戦争はまっしぐらに進むべき理想のゴールを描けない戦いだったのではないでしょうか。
高い目標を定め、それを達成していくためには、その目標めざしてまっしぐらに進んでいくことが必要です。自らが正しいと信じる道を、妥協することなく真っすぐに突き進んでいきたいものです。