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『稲盛和夫一日一言』 5月15日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5月15日(水)は、「真の無頼性(ぶらいせい)」です。

ポイント:どんな分野であれ、イノベーションを起こそうとするなら、自由な精神がなければ真の成功を期すことはできない。創造的な領域では、真の無頼性が求められる。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「真の無頼漢(ぶらいかん)たれ」の項で、自由な精神を持つことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 何か新しいプロジェクトを進めようとする場合、正しいと思った道をまっしぐらに歩むことが最も重要だと思います。どんなに予期しない苦難が待ち受けていようとも妥協はしないのです。
 ある意味では、これは自由を求める精神のなせる業とも言えましょう。

 普通、無頼漢とは、親に反抗し、体制に反旗を翻し、権力に背を向け、ただ自分のしたい事を押し通す人のことを言います。

 真の無頼漢とは、独立心を持つこと、つまり人に頼らないことです。安易に妥協したり、わかったふりをしないことです。頼らないということは、自由だということなのです。他に頼らず、自分に頼るのです。

 ただ自らのみに拠り所を求めることで、無頼は真に創造的になることができます。あらゆる拘束から自由になることによって、自らの信念をどこまでも追求することができるのです。こうした自由な精神がなければ、真の創造性は生まれてきません。

 ビジネスにおいても、科学、芸術においても、イノベーションを起こそうとするなら、この自由な精神がなければ、真の成功を期すことはできません。(要約)

 今日の一言には、「真の無頼性とは、独立心を持つこと、人に頼らないこと。安易に妥協したり、分かったふりをしないこと。頼らないこと、自由だということ。他に頼らず、自分に頼ること」とあります。

 2015年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第1巻 研究開発に賭ける』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、研究開発に求められる企業家精神について、名誉会長は次のように説かれています。

 研究開発を行う人には、企業家精神といったものがどうしても必要です。いわゆる勤め人、サラリーマンの気持ちのままでは、優れた研究開発はできません。研究開発を行う者こそ、企業家精神にあふれていなければならないのです。

 例えば、「なぜこの研究開発を行うのか、なぜ期日までに終えなければならないのか」という問いかけに対して、ただ「言われたから」「指示されたから」といった程度の動機づけで研究開発を行っているようでは、熱意が非常に弱いのです。
 企業家精神が非常に旺盛で、その研究開発の必然性を自分自身で正しく認識でき、正しい動機を持ち、部下にもその意義を説くことのできるような人でなければ、開発リーダーは務まりません。

 それと同時に、クリエイティブなことができる人というのは、ある種の「狂」の状態を持っている人でなければならないと思います。
 研究開発を行う場合、専門性があって非常に頭が冴えていると同時に、常に冷静に自分の成果を分析できなければなりませんから、どうしてもノーマルな人間が選ばれる傾向があります。


 しかし、平時には非常にノーマルな常識人であっても、ことに遭遇したときに、「狂」の世界に入れる人間でなければなりません。
 ことにあたって「狂」の状態に入るためには、物理的な環境条件が必要です。分かりやすく言えば、ハングリーな状態が必要だということです。

 研究開発を行う場合、そうした環境条件のもとで、自分を「狂」の状態にまで追い込んでいくことが必要になるわけですが、さらに言えば、私はそうした物理的な条件を意図的に自分でつくりながら、同時に「狂」の世界と常識の世界とを自由に行き来できるような人でなければならないと思っています。

 それはまさに、夢と現実の間を自由に行き来できることだと思います。
 つまり、研究開発を行う人は、取り組んでいるテーマを「可能性があればやりたい」というような夢のままにしていてはいけないのです。現実と夢の間がだんだん縮まってきて、実際にテーマの開発に成功したかのような錯覚をするぐらいにならなければなりません。

 この二つの世界を自由に行き来できるタイプの人でなければ、優れた研究開発はできないと思います。(要約)

 本来「無頼」には「 正業に就かず、無法な行いをすること。また、そのさまやそのような人」「頼みにするところのないこと」といった意味があります。

 また「無頼漢」には、「無頼な男。ならずもの。ごろつき」、もっと端的に言えば、やくざ者、無法者、問題児といった意味がある一方、「誰にも頼らないで生きている人」といった意味もあるようです。

 イングランドの詩人ジョン・ダンが残した次のような言葉があります。
 ” No man is an island.” (人はひとりでは生きていけない)

 創造的な領域における「他に頼らず、自分に頼る」とは、ひたすら自分の信じるところを拠り所に進もうとする心の状態で臨むことこそが重要なのだということではないでしょうか。

 そうした精神状態を獲得するためにも、『日々精進』を怠らず、少しずつでも己の人間性を高めていきたいと思っています。


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