『稲盛和夫一日一言』 2月16日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 2月16日(金)は、「愚直さを喜ぶ」です。
ポイント:もし今、「自分には真面目に働くことしか能がない」と嘆いている人がいるなら、「その愚直さこそを喜べ」と言いたい。
2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)の中で、愚直に働くことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
人が易きにつき、驕り高ぶるようになってしまいがちなのは、人間が煩悩に満ちた生き物だからです。そのような人間が、心を高めていこうとするときに大切なのが、悪しき心を抑えることです。
人間の煩悩は、百八つもあるとも言われています。
中でも「欲望」「怒り」「愚痴」の三つは、卑しい心、つまり人間を苦しめる煩悩の最たるもので、心にからみついて離れず、取り払おうとしても、なかなか拭い去ることはできません。
お釈迦様は、この三つを「三毒」と呼ばれ、人間を誤った行動に導く諸悪の根源だとされています。
「人よりも多くの金銭を手にしたい」「人よりも高く評価されたい」といった欲望は誰の心にも潜んでいて、それがかなわないと人は「怒り」を覚え、「なぜ思った通りにならないのか」と「愚痴」や「不平不満」をこぼすようになります。人間とは、常にそうした三毒に振り回されて生きている、因果な生き物なのです。
生きていくうえで、この三毒をまったくゼロにすることは不可能です。なぜなら三毒は、肉体を持った人間が生きていくためにはどうしても必要な心だからです。それは、人間が生物として生きていくうえで必要だからと、自然が本能として与えてくれたものなのです。
しかし、それが過剰になってはいけません。だからこそ、三毒を完全に除去できないまでも、まずはその毒素を薄めるように努めなければならないのです。
そのための唯一無私の方法と言っていいのが、「一生懸命に働く」ことなのです。自分に与えられた仕事に、愚直に、真面目に、地道に、誠実に取り組み続けることで、自然と欲望を抑えることができます。
夢中になって仕事に打ち込むことにより、怒りを鎮め、愚痴を慎むこともできるのです。また、そのように日々努めていくことで、自分の人間性も少しずつ向上させていくことができるはずです。(要約)
今日の一言には、「つまらないように見える仕事でも、粘り強く続けることができる、その継続する力こそが、仕事を成功に導き、人生を価値あるものにすることができる、真の『能力』なのです」とあります。
1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、一日一日を懸命に生きることの大切さについて、名誉会長は次のように説かれています。
今日の仕事がうまく行くかどうかも、また明日何が起こるかもわからないのに、今から十年先のことなど、誰も見通せるわけがありません。
しかし私は、毎日を懸命に生きようと、自分に言い聞かせてきました。なぜなら、そうしていると明日が見えてくるようになるからです。
どうなるかわからない将来をあれこれ心配するよりも、今日一日を大事に生きることのほうが、私にとっては大切なことだったのです。
今日を懸命に生きれば、結果として、かなりの正確さで明日が見えてくる、と明言できます。そして、将来どのように変化していくのかを推測できるようにもなってくるのです。
一日一日を懸命に生きれば、未来が開かれてきます。正確に将来を見通すということは、努力して今日を懸命に生きることの延長線上にしかないのです。(要約)
「愚直」には、「正直すぎて気の利かないこと」「馬鹿正直」といった意味があります。基本的には、悪い意味ではありません。例えば、「愚直に頑張ります!」と言えば、一生懸命頑張ることをへりくだって表現したことになります。
しかし、他人にむけて使うときは、けなす場合などにも使われます。まっすぐで正直なあまり、臨機応変な行動や対応ができない場合などです。
個人的には、「人様に迷惑をかけるような人間にだけはならないように」といった両親の教えをベースに生きてきたつもりですが、振り返ってみると、「三毒」に振り回されて自分を見失ってしまったときも多かったなあと、反省するばかりです。
残りの人生くらいは「愚直に、真面目に、地道に、誠実に」生きて、「いろいろあったけど、いい一生だった」と思って生涯を終えられればと願っています。