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詩 | 初恋の記憶

はじめて手を繋いだ帰り道のこと
別れ際に突然抱き寄せられた日のこと
私たちしか知らない秘密の場所で
はじめて彼に触れた夜のこと。

10年以上も時が流れたのに
不意にあの頃が懐かしくなってしまう
地元の、田舎のなんでもない景色でさえ
あの頃の私たちには宝物だった。

大人になって、都会に染まっても
どれだけ他の男を知っても
高層ビルから見下ろす、煌めく夜景よりも
あの夜、彼と見た工場夜景の方が輝いていた。

大人になっても、色褪せない記憶
あんなにまっすぐ愛した人がいたということ
みずみずしい感情がフラッシュバックする
あの頃の自分が、少し羨ましくなった。

目を閉じると、あの頃の私が教えてくれる
誰かをまっすぐに愛するということは
確かに苦しいかもしれないけれど
とても、尊いことなのだと。

お酒も知らなかったあの頃
少し背伸びしてタバコを吸っていた彼と
10年後のお互いの将来を語り合った
そしてその将来を、今は別々に生きている。

今、彼はどうしているんだろう?
思い出はいつも、綺麗なものだから
綺麗なままで取っておこう
あの頃に想いを馳せたくなる、そんな夜。

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