星降る丘の約束①

1. 忙しすぎる日常

東京都心のオフィスビル。
夕焼けに照らされた窓の向こうに、点灯し始めた街の明かりが浮かび上がっている。広告代理店で働く高橋美咲は、パソコンの画面に釘付けになっていた。

「高橋さん、今夜中にこのプレゼン資料の修正お願いしますね」
同僚の声が背後から響く。ため息をつきながら、美咲はディスプレイの時計に目をやる。午後8時を過ぎていた。

その瞬間、机の上に置かれたスマートフォンが振動する。画面には「田中病院」の名前が表示されていた。

「病院…?」美咲は不安そうに眉をひそめ、電話に出る。

「高橋さん、こちら田中病院です。お父様が急変されまして…」
受話器越しの看護師の声が続くが、耳鳴りのように周囲の雑音が混ざり、内容が頭に入らない。ただ「急変」という言葉だけが、胸の奥で冷たい波のように響いた。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集