クラフト担々麵屋さん 「にのたん」
小田急線の和泉多摩川駅にはこれまで新参者の我々夫婦にとって不思議なスペースがありました。ある時は学校を出たての若者やイベント好きと思われる乗りの良い40前後のお兄さん、お姉さんが祝杯を挙げていたり、ある時には20代後半とおぼしきお兄さんがワンオペでスパイスカレーのお店を出していたり、かと思えば何もなくガランと静まり返って時もあります。良く調べてみると、このスペースは新たな飲食店を始めようとする人を応援するFORT MARKETというシェアキッチンだということなのです。
いつも皆楽しげに食べているのに、タイミング悪く他の場所で食事をしてきたばかりだったり、もう既に食材を買い込んでしまった後であったりして、これまでその脇を羨まし気に通り過ぎるばかりでした。そんな我々に本日のお昼チャンスが訪れました。
本当のことを言うとそんなに大それたものでもないのですが、ドラムレッスンの帰り、その前を通りかかると丁度汁なし担々麵のお店が出店していたのでした。昨夜ちょっと重たいものを食べ、朝も多少無理をしながらきっちり食べていたため、まだ妻はお昼の用意をしていない筈です。私は急いで妻に、まだお昼の用意をしていないのなら、駅の例の場所に丁度担々麵のお店が出ているからそこで食べよう、と電話をしました。
その店の名は、「クラフト担々麵 にのたん」。若い女性が一人で店を切り盛りしていました。担々麵の命である朝挽きたてのフレッシュなゴマダレは勿論、唐辛子は乾燥・発効・生の3種を組み合わせ、挽肉も国産豚肉肩ロース赤身を使用、麺は全卵を使ったもちもち麺です。散らされたアサツキ、山椒、ゴマ、そして添えられたパクチーが意外にも飛び切りのアクセントとなります。更にレモンとお勧めの薬味であるラー油と追加用の山椒で自分好み探しの旅を心行くまで楽しめます。
ご飯を追加で頼んだのは大正解でした。ゴマダレと五香粉で炒めた挽肉、唐辛子、山椒がバランス良く配合された魔法のつゆを余すところなく絡めとって味わい尽くすことができるからです。夫婦揃って額に汗を掻きながら、ペロッと一皿あっという間に食べ終わってしまいました。ああ、残念。
このシェアキッチンからは、様々な美味しいマフィンで川べりの生活を楽しませてくれる「NARUTO COFFEE」が巣立っていったと聞きます。若い人が創意工夫を重ね、お客さんを喜ばせようと挑戦している様子を見るのは清々しく、自然と応援したくなります。いつかこの若い細腕の女性もこの町のどこかに店を構えてくれることを願っています。ごちそうさまでした。