江戸東京たてもの園
いつもドラムやゴルフなど、休日は自分の好きなことばかりさせてもらってここしばらく旅行にも行っていないため、今度時間がある時に3つ行きたいところがあるから、と妻から言われていたその1つに今週末行ってきました。小金井公園の園内にある、江戸東京たてもの園です。
小金井公園という公園については、その存在さえ知らなかったのですが、実際に訪れてみると都立の比較的大規模なしっかり管理された公園でした。我々はJR中央線武蔵小金井駅からバスを使って行ったのですが、西武新宿線花小金井駅からも同じくバスを使ってアクセスできるようです。近くにこんな立派な公園があったらさぞかし癒されるに違いありません。
一方、江戸東京たてもの園はというと、その設立趣旨は文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示するとともに、貴重な文化遺産として次代に継承することを目指すということのようです。都心から離れ、駅からも徒歩ではちょっとアクセスが難しい場所で、良さを分かってくれる人だけに立ち寄ってもらえれば良いという職人気質のスタンスのように思えました。
ミュージアムの正面出入口も、案内のしおりによると「光華殿」という歴史的建造物を改修したビジターセンターに位置しているとのことなのですが、遠目からそのつもりで見ていないと、どこにでもある公民館に入るかのような地味な印象を受けました。ただ、中に入ってエントランス広場を抜けると、一転してそこからは移築された建物のオンパレードとなります。我々は右に折れて高橋是清邸から見学したのですが、即座に2・26事件の時代に引きずりこまれました。その先に進むと製紙会社のオーナーの邸宅や宗偏流の茶人が建てた茶室等、明治・大正期の建造物が目白押しで、たてもの園の地味ながら本腰を据えた意気込みを感じさせられました。
さらに足を進めると、万世橋交番が見え、郷愁を誘う都電7500形の実物が置かれています。思わず中に乗り込み、都電の歴史などの説明書きはもとより現役当時の車内利用注意書きなどありとあらゆる文字を舐めるように読み尽くしてしまいました。何しろこの電車は私が小学生低学年の頃よく利用した玉電と佇まいがそっくりであったためなのですが、あまりの熱中ぶりに妻に呆れられてしまいました。
ハマる場所は人それぞれのようで、妻は昔の商家・居酒屋が軒を連ねた下町ゾーンの突き当りにある銭湯に興奮冷めやらぬ様子です。男女それぞれの脱衣所、浴槽が見学でき、どこで知ったのかインド風の外国人カップルが自撮り棒を操り浴槽で湯に浸かるポーズを取って満面の笑みを浮かべています。妻のお気に入りは男湯に描かれた雄大な富士山で、この「子宝湯」に浸かったら私達も子供に恵まれたかもしれないのにね、っだそうです。
この町の中にあるたべもの処「蔵」で武蔵野の手打ちうどんを味わった後、
エントランス広場に戻り、その先の洋風邸宅や写真館、名主の家、田園調布の家、建築家の自邸、洋館、農家など様々な建築様式の住宅群を見て回りました。本当に様々なタイプの建物が丁寧に復元・展示されていて、維持管理には相当の手間暇がかかっているだろうと改めてその心意気に敬意を表します。
我々は昼前にこのミュージアムを訪れたのですが、結局閉園(16:30)の直前である16:00前まで、飽くことなく嘗ての東京に実在した建物を味わい尽くしました。最初はどちらかというと人影もまばらであった園内でしたが、時間を追う毎に人が増え、若いカップル、男女の学生と思しき一団、外国人、小さい子連れのファミリー、中年の女性連れ、バスツアー客など多種多様の人々で賑わいを見せていました。
このミュージアムは地味ながら見ごたえ十分です。復元・保存状態の良い様々な建物があるため、恐らくどこかで自分のお気に入りに出会うことができる、或いは、何らかの記憶を呼び覚まされたり、空想の世界に浸ったりする瞬間があるのではないかと思います。若干アクセスに難はありますが、近くに用事がある際には、足を伸ばす価値があるのではないかと思います。我々夫婦も不思議な空間に足を踏み入れ若干眩暈を覚えつつ、しかし人が長い歳月を暮らしてきた空間の醸し出す居心地の良さも身に纏いながら公園を後にしました。
〒184-0005
小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)
https://www.tatemonoen.jp/