#03.草をとって、土を起こす。
※この日の作業を撮影したタイムラプス(22秒)
2018年4月21日
朝8時30分。風もない好天に恵まれたこの日、借りたばかりで草ボーボーの農園予定地を前に、私はユルめの気合を入れつつあった。
荒れ地の開墾はとにかく掃除から始まる。長らく耕作放棄されていた場所だけに、何が落ちているか分からないし、何より草が多すぎて地面が見えない。日が照って暑くなる前にあらかたの草刈りと掃除を済ませてしまおうかと思っていた矢先、ご近所さんが話しかけてきてくれた。
農園予定地の向かいに住むおっちゃんだった。この土地を借りようか迷っていたとき、水のことや日当たりのことなどを色々と教えてくれたこともある。
「ホントに借りたんかね?」
「ホントに借りました。今から草でも刈ります。」
「土はどうやって鋤くんかね?」
「使う分だけ、スコップですかね。(笑)」
「そりゃぁ植えるまでに相当かかるのぉ。ワシがトラクター入れたろうか。」
「いいんですか!?すごく助かります!」
時間にして数分のやり取りだったと思う。田舎特有(なのだろうか?)の人の親切が心にしみる瞬間だ。なんとかおっちゃんにも恩返しをしなければ。
「この面積を全部草刈って、掃除したら昼までかかるのぉ。昼からトラクター入れてやるから、それまでに何とか片付けとけや。」
おっちゃんは午前中は家の周りでゆっくりして、午後から田んぼにトラクターを入れるはずだ。田んぼまで行く途中で農園予定地に寄り道をして、土を鋤いてくれるつもりらしい。
スコップとクワで地道に土を耕すつもりだった私にとって、こんなに嬉しい申し入れはなかった。
そうとなれば善は急げ。草刈りと掃除に当てられる時間は3時間ほど。ゆっくりやっても余裕のありそうなスケジュールだが、ここは一発、私にやる気があることをおっちゃんにも分かってもらうチャンスだろう。
刈払機のエンジンをかけ、草を刈り始める私。いくら草ボーボーとはいえ、まだ春先のやわらかい草だ。機械を使ってしまえば苦戦する事は無かった。とはいえ、予想外のことは起こるもの。しかもこの日の予想外は、想定のはるか斜め上を行っていた。
刈払機の音を聞きつけたご近所の方が数名、なんと手伝いのために集まってくれたのだった。
ちょっと何言ってるか分からないかもしれないが、どうやらおっちゃんの口から「近々ここで彼が畑をやる気らしいぞ。」的な噂が出回っていたらしい。もはや小さなイベントである。
刈った傍から片付けられていく草。それを見たおっちゃんも予定を前倒しして、午前中にはトラクターを動かしてくれた。
こうして作業開始から1時間半が経過し、10時の一休みの頃までには、草ボーボーの荒れ地が、見た目には一応畑っぽい状態までに開墾されてしまった。
かくして、冒頭のタイムラプス動画の通り、予想を遥かに超えた作業スピードで、開墾はあっさり進んでしまったのである。