#01.畑を借りた。
2018年4月20日
家庭菜園のために畑を借りた。
街で流行りの市民農園なんて親切なものはド田舎にないが、代わりに耕作放棄地は売るほどある。
家から歩いて5分。敷地内に井戸と小さな川が流れる土地を、特に利用料金を払うことなく借りることができた。
少なくとも10年単位で作付けされていない、正真正銘の耕作放棄地だった。それでも「土地を荒らす者は罪人」という価値観の息づく中山間地だけあって、どうやら毎年草刈りだけは行われていたらしい。
土地の持ち主も農業に興味はなく、草刈りの手間が無くなるならと快く土地を貸してくれた。
ご近所さんによれば、土地自体は元田んぼ。コメを植えると収穫前にことごとく稲がブッ倒れるという、曰く付きの田んぼだったらしい。
稲が倒れると収穫に手間がかかるし、精米しても小さな砂利が残りやすかったりで、大変厄介なのだが、逆に言えば稲が倒れるほどたくさんの穂がつく田んぼだったということ。畑にするにはむしろ好条件なのではと思う。
目をつけていた土地を借りることができた私は、草ボーボーの荒地が立派な畑になる妄想をしながら、インスタ映えのしない写真を揚々と撮り、まだなんの作業もしないままにFacebookに「農園日記」なるページまで作ってしまった。
自分なりにモチベーションを高めようとの行動だったが、翌日にはそんなチンケな意思とは裏腹に、凄い勢いで退路が断たれることになる。