味噌ラーメン
味噌ラーメンですが、嫁様が買ってきた福袋に入っていました。
札幌すみれ監修という事ですが、濃厚で美味しかったです。
さてさて、とうとう手術が終わり終盤にも近付いた第6話の始まりです。
手術後は家族に見守られ晴れてICU入りしたのですが、担当は上戸彩じゃないですか、ワクワクもんじゃないですか。
でも、ほとんど記憶がないんです、痛みで悶絶して意識朦朧だったからそれどころじゃなかったんです、しかも入っているのは1日だけだったんです。
特筆すべきエピソードは悶絶中、上戸彩にパンツ降ろされてカテーテルを刺されたという事くらいでした。
でも上戸彩にカテーテル刺されるなんて普通ないですよね、貴重な体験ですよね、絶対に刺す時は握られてますよね。
そんな訳でICUから、重症患者の集う魔窟と噂されるナースステーション近くの6人部屋へと戻りましたが、私に充てがわれたベッドは意外にも3列の真ん中でした。
しかもですよ、ほぼ部屋の人はやはり認知症や重症の寝たきり爺さんなんです、自力で動けるメンバーは私だけなんです、爺さん達の移動は車椅子どころかベッドごとなんです。
もう前を向いても横を向いても斜めを向いても寝たきり爺さんです。
見渡すかぎりの爺さん畑です。
これでは背後しか逃げ場はありませんが、そこは壁です。
しかも壁に向かおうとしても肋骨が痛くてベッド上では向けません。
手術前のベッドは出入口の横だっので片側の音響を防御すればなんとかなりました、しかしこれは周囲5マスを飛車角金で囲まれちゃった状態です。
どこに逃げたらいいんですか、詰んだじゃないですか、これ完全に詰みじゃないですか。
さらには24時間ナースコールの大合唱です、周囲180度サウンドがドルビーサラウンドなプロロジックです。
右からは痰の吸引音が聞こえてきます、左からは絶え間ない咳も発せられます、正面からは食事中でもオムツ換えのフレグランスが漂ってきます。
絶望的にも、これを遮るのはカーテン一枚です。
眠れません、これでは全く眠れません、よく深夜に巡回している看護師さんとベッド上から目が合いました。
そんな事態となった翌日に、ICUの上戸彩と廊下で会ったんですよ。
良く眠れましたか?と聞かれましたが寝てません、寝たいのに眠れないんです。
「ははは・・・」と力なく返事するしかありませんでした。
確かにですね、そのような病人さん達も診なければならない病院の立場は分かるんです、爺さん達も好きで寝たきりになった訳じゃないというのも理解しているんです。
でもね、脇腹に激痛が走ったって、曲がりなりにも自力で動ける私がこの病室にいる必要性はなんなのでしょう。
廊下からは「すいませーん!!帰りたいんですけどーー!!!」という婆さんの絶叫が夜中でも5分間隔で聞こえてきます、深夜どこからともなく謎の念仏も聞こえてきます。
隣のベッドで寝ていた爺さんなんか、一度心臓が止まって病室が騒然となったんですから。
この状態を経験してごらんなさい、普通の精神レベルなら草加せんべい発狂くんです、当の爺さん達は耳が遠いせいか寝たい時に寝ています。
そんな中、唯一とも言える憩いの場は面会者の来なくなった談話室だったんです。
眠れないから草木も眠る丑三つ時に談話室で無料の煎茶を飲むじゃないですか、窓からは街路樹も見えるじゃないですか。
でもなんで、なんで、たかがボケっと突っ立てるだけのプランツがグースカ寝てる時間でも、なんで万物の霊長たるホモサピエンス様が寝てないんですか、なんで寝かせてくれないんですか。
誰か説明して下さい。
そんな日が3日も続くと流石に看護師さん達も私を憐れと思ったのか、別の6人部屋へ移動させてくれたんです、しかも窓際のベッドにしてくれたんです。
この病室って景色が良かったんですよ、もうサイバー空間なんです、イベントがあると隣のスタジアムがライトアップされるんです。
しかも病室には人の良さそうな中年3人しかいなかったんですよ、これは地獄から楽園に来たみたいなもんじゃないですか。
それで、これは4日ぶりにゆっくり眠れると思って消灯時間ですぐ横になり寝たんです。
「だから!着いてくんなと言ったろ!!」
となりのベッドからの大音量な寝言で飛び起きました。
【 次回予告 】
一人の男と、一つの病室が、病棟内を闇の星となって流れた。
一瞬のその暗黒の中に、人々が見たものは、手術、ICU、魔窟。
いま、全てが終わり、駆け抜ける喜び。
いま、全てが始まり、ダークネスの中に望みが生まれる。
最終回「流星」
遙かな家路に、全てを掛けて。