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娘が産まれた日のこと

今から約2ヶ月前のこと。

オリンピックの男子バスケ決勝で4Qにステフィン・カリーが連続3Pを決めてNight-Nightしていた頃。

朝4時頃に前駆陣痛が本格的になって
呻く妻の腰をさすりながら己の無力さを痛感した。

夫である僕にできることといえば
時計を見ながら妻の陣痛の波に合わせて腰をさする、
合間を見て、栄養補給できるようにご飯を炊いて小さなおにぎりを沢山握る、
水、お茶、スポーツドリンクを手の届くところに置く
このくらいのこと。

これから1つの生命が誕生しようとしている時に
妻が陣痛に耐えている時に
娘も頑張ってこの世界に出てこようとしている時に

僕は痛みを代わってあげることもできなければ
出てこようとする娘の手助けもできない。

無力だ。
だから、産まれてきたら僕にできることは何でもやろうって思った。


娘が産まれたのはその翌日。
パリオリンピックが閉会した日。

日付が変わってAM2時頃
産院へ。
無痛分娩での出産立会いができない病院であったし、
子宮口もまだまだ開いていないから
ご主人は一度帰ってくださいと。

帰宅したは良いもののソワソワして眠れるはずもなく。
オリンピックの閉会式を見届けて
洗濯掃除を一通り終わらせて
産院の近くのカラオケに行った。
朝7時のこと。

今この瞬間も妻と娘が必死に頑張っているんだと思うと
とても落ち着いてなんかいられなかった。

めちゃくちゃ感情を込めながら
SUPER BEAVERの曲を熱唱した。
歌いながら泣いた。

何の涙だったんだろう。

長い妊娠生活が終わる寂しさ?
⇨妻はもちろん心身ともに大変だったと思うが、とても愛おしい時間だった。
それとも無事に産まれてきてくれと思いながらも不安な涙?
⇨正産期に低血圧な妻が異常な高血圧に。妊娠高血圧症すれすれ。
はたまたやっと娘に会えるという嬉しい涙?

多分、全部そう。
寂しかったし、不安だったし、怖かったし、楽しみだったし、嬉しかった。

いろんな感情でごちゃ混ぜだった。
初めての感覚。
感情に数値があるとしたら、今までMAXの感情が10だと思ってたのに
寂しいも怖いも楽しみも嬉しいも全部が代わる代わる30くらいで押し寄せてくる感じ。

そんな気持ちになっている僕とは裏腹に
無痛分娩で麻酔を入れた後の妻からは
「なんか変な感じ〜w」
「麻酔半量しか入ってないのに全然痛まないんだけど。笑」
なんてLINEがくる。

そしてお昼前。
「産まれたよ!」のLINE。
すぐにテレビ通話繋いでくれた妻。
元気な妻と赤ちゃんを目にして、また泣いた。
めちゃくちゃ泣いた。

ほっとして、嬉しくて、愛おしくて。

多くの人にとって何でもない今日が、
僕と妻にとって娘の誕生日という特別な日になった。

早朝降っていた雨はお昼には止んでいた。

あの日僕が見上げた空は、涙で滲んでいたけど多分綺麗な青空だった。

美しい日なんだよな
特別はそうだ普遍的な形をした幸せだ

SUPER BEAVER/美しい日



30分間の面会を終えた僕は
これ以上ない晴れやかな気持ちで
安産祈願をした神社に御礼参りをした。

この子が生きていく明日が、未来が
どうか健やかなものでありますように。

多くの人にとっては普通で当たり前の何でもない1日が
愛おしくかけがえのない1日になった思い出の話。

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