朝の通勤電車は、人生さながらだ。
人は基本的には自分のことしか考えないものだと思うけど、通勤電車の中はそれがよくあらわれるように思う。
人を押しのけるように必死に席を確保するおばさん。
何の仕事に必要なのか、寅さんを彷彿とさせる角張った馬鹿デカいカバンを後生大事に膝の上で抱えるビジネスマン。
前のめりの姿勢でスマホゲームに夢中な若者。
リュックサックを膝の上に抱えてその分広がった肘が両隣を圧迫している学生風。
人様の行動ばかり目についてしまうが、自分自身の行動も怪しいものだ。
たまたま座れた席で隣の人の肘がグイグイしていたらこちらも「負けないぞ〜」とばかりにグイグイしてしまうし。
恰幅の良い骨盤の緩んだ紳士が足を広げ気味に座っていたら、こちらも自分のテリトリーを死守すべく頑として足に幅を狭めない。
そんなことをイチイチ気にしてるから余計に疲れる訳だが、そんな中、上品な佇まいの人に出会うと心が浄化されるような感じがする。
周囲に気遣いながらそっと腰掛ける女子学生。
だっちゅーのバリに肩を狭めて座るメタボ気味のおじさん。
電車が揺れたときに石像のような体幹の強さを発揮せず、しなやかに、かつ周囲に嫌悪感を抱かせない絶妙な身体能力を発揮する新社会人風の若者。
脳にはミラー・ニューロンという働きがあるようだが、そうした人に出会えると、こちらも居住まいを正そうという気にさせてくれる。
仕事でもプライベートでも、人にポジティブな影響を与える人と、ネガティブな影響を与える人がいる。受け止める側の捉え方にも依りますけれども。
いつもどこかそこはかとなく疲れている人に、ちょっとしたポジティブな影響を与えられる、そういう人に、私はなりたい。
なんつって。