「キッチン」にみる吉本ばななの言葉についての評価と翻訳の可能性の考察
序論 吉本ばななは『キッチン』(福部文庫,1991)でデビュー、第6回海燕新人文学賞を受賞した。その売上は二百万部を突破し、世界三十カ国以上で翻訳されている。福武文庫に同時収録されている『ムーンライト・シャドウ』は2021年に人気俳優らで映画化され話題を呼んだことなどからも、現代でも吉本ばなな作品の根強い人気が伺える。
私も他の大勢の読者のように、デビュー作『キッチン』で初めて吉本ばななの言葉に触れた。そこで洗練された言葉づかいに圧倒され感動を覚えた。小説の読後感を二種類