フーコーの視点を導入してヘーゲルを読む〜『国家はなぜ存在するのか』
◆大河内泰樹著『国家はなぜ存在するのか ヘーゲル「法哲学」入門』
出版社:NHK出版
発売時期:2024年7月
本書はヘーゲルの『法哲学』の入門書です。ヘーゲルの国家論へ誘うのに、フーコーを参照しているのがミソです。すなわち「ドイツ国法論の理論的文脈と、そこに大きな権力概念の転換を見出したフーコーの議論の両方をヘーゲルの『法の哲学』に接続する」ことで、ヘーゲルの国家をめぐる議論を「現代の私たちを取り巻く権力のあり方を論じたものとして理解することができるのではないか」というわけです。
なるほどヘーゲルの観点をとれば、フランス革命が恐怖政治に帰結した理由がよく理解できます。ヘーゲルは職業団体としての中間団体を重視したのですが、フランス革命は中間団体を解体して個人と国家を直接的な関係だけで国民国家を創出しようとして失敗したのでした。
もっともヘーゲル哲学を総体的にみれば、現代人にはさほど魅力的には感じられません。近代的家父長制を体現したような女性蔑視は明らかだし、緊急事態における主権の一元化論も今日的には問題含みといわなければなりません。むろんそれらはおそらくヘーゲルが生きた時代の思潮を反映したもので、ひとりヘーゲルに帰責させるべきものでもないとは思いますが。