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世界は「つながり」で成り立っている!?〜『だいたい夫が先に死ぬ』

◆高橋源一郎著『だいたい夫が先に死ぬ これも、アレだな』
出版社:毎日新聞出版
発売時期:2023年7月

サンデー毎日に連載しているコラムをまとめたもので、2022年刊行の『これは、アレだな』の続編にあたります。コンセプトは「世界中にバラバラに存在していて、なんの関係もない、と思われるものたちの身辺を調査し、そこに隠されている深い関係を発見する」こと。

清少納言を継承する者として当今人気の女性ブロガーを位置づけたり、『天空の家 イラン女性作家選』に収録された一篇に小津安二郎の『東京物語』を重ね合わせたり。「ウルトラマンをつくったのは三島由紀夫である」という俗説を検証すべく、三島の『美しい星』を読み、ウルトラセブンの挿話との共通点を指摘するのも楽しい。ロシアのウクライナ侵攻を世界における過去の侵略戦争と比較するのもまさに「これは、アレだな」的な思考といえましょう。

とはいえ、本書ではバラバラに存在しているものの共通項を見つけるというよりも、一つのテーマのもとに類似の明らかな作品や現象などを紹介し、それで一篇を構成するというスタイルも目立ちます。

逢坂冬馬の『同士少女よ、敵を撃て』について論評する際には、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』を関連作品として挙げています。本書のタイトルに採られた一文では、男女の平均寿命の相違をマクラに振って、夫に先立たれた妻が、それまでと違った生活に踏み出していく姿を描いた作品について論じていきます。
いずれも素材の組み合せは全くストレートなものか、最初からワンテーマを掲げて書き進めたものです。

もちろん、読者の側は当初のコンセプトなど読み進めていくうちに忘れてしまうもの。要は面白ければ良いのです。自分に興味のないテーマであっても、高橋の軽妙な筆致で退屈することはありませんでした。

時節柄、戦争関連の話題が多く、ときにシリアスな雰囲気を醸し出すこともありますが、ロシアによる侵攻を契機にウクライナの勉強を始め、自分が無知だったことを率直に述べているのも誠実な態度だと思います。

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