破壊と創造の日々を振り返る〜『イーロン・ショック』
◆笹本裕著『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』
出版社:文藝春秋
発売時期:2024年8月
著者はイーロン・マスクによってTwitter Japan社長の座を追われた人物。イーロンが乗り込んできて退職するまでを綴っています。騒動の渦中にいた当事者の手記ですから、当然、読み物としての面白さを期待したのですが、具体的なファクトの記述は断片的で、おまけに主観的な寸評が入り混じっているため、イーロンの人物像が明瞭に立ち上がってきません。後半、著者自身の職歴が述べられているくだりも、失礼ながらそんなことに関心を持つ読者はどれくらいいるだろうかという疑問だけが残りました。
恨み節に陥らないよう気を使いすぎたのか、「こうでもあるが、ああでもある」式の曖昧模糊とした書きぶりが目立ちます。たとえばイーロンについて「双方向の「ダイアログ」を好みます」と論評する一方で、すぐあとに「独裁的なリーダー」と断定していたり。
著者は最終盤で「日本人はこれから、世界の中で戦い、生き抜いていかないといけません。それなのに、あまりにものんびりとしているなと思わざるをえません」と書いています。イーロンの荒療治を批判をこめて述べてきた末にそのような結論に至るのだとしたら、彼のパフォーマンスは正しかったということになるのではないでしょうか。
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