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そして映画はつづく

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ZAQブログ『コラムニスト宣言』に発表した映画レビュー記事がベース。ZAQ-BLOGariのサービス停止に伴い、記事に加筆修正をほどこしたうえでこちらに移行しました。DVD化され…
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#阪本順治

憎しみから始まる戦いは勝てない〜『エルネスト』

「革命」なる言葉が現実的な意味を担って輝いていた時代と国家がありました。1950〜60年代、キューバ。そして、ボリビア。 キューバ革命の歴史的英雄として今もなお多くの人を魅了してやまないエルネスト・チェ・ゲバラ。1967年、ボリビアでの戦線で死亡。今年は没後50年にあたります。 ボリビアでの革命を夢見て、チェ・ゲバラと行動をともにした日系ボリビア人の医学生がいました。フレディ前村ウルタード。『エルネスト』はその実話に基づいた映画です。 波乱に満ちていたであろう彼らの物語を

原田芳雄、渾身の遺作〜『大鹿村騒動記』

南アルプス連峰が間近にそびえる長野県の大鹿村。この村には江戸時代に発祥する村歌舞伎の伝統が受け継がれてきました。あの竹下政権下の「ふるさと創成事業」では、豪華な歌舞伎衣装を新調して今も村の財産として村民の目を楽しませているというほどの村歌舞伎の古里なのです。 映画『大鹿村騒動記』はこの小さな村の伝統を基に、晴れの舞台をめぐって人々が織り成す悲喜交々を大人のユーモアと遊び心で描き出した群像劇の佳品といえます。 映画は公演5日前から説き起こされ公演本番までを描いていく。最終的