プラリネ
ずっとあなたの横顔を見てたから気付いてしまったんだと思う。
朝の情報番組では都心に新しく出来た商業施設を紹介していた。
色鮮やかな、もしくは少ない色味で洗練されたイメージのカフェやショップが軒を連ねていた。
声高にそれらを紹介するアナウンサー、見目麗しい女の子がショップの一つに入り、リポートを続ける。華やかな液晶画面の向こう側に見入って、あなたに声をかけた。
素敵だね。行きたいね。
今まで数え切れないくらい、様々な場所にあしをはこんだ。
海の近くの水族館、お花がいっぱい飾られたカフェ、下町の狭い居酒屋さん、コロッケが美味しい商店街、日本で一番高い電波塔、寝転んで見上げるプラネタリウム…次はこんな場所もいいかもしれない。
新しい場所を二人並んで、興味惹かれたものひとつひとつ、指を差しては笑い合うのを想像したところで、あなたからの返事が返ってきた。
そうだね、行けたらいいね。
その時点で多分違和感があったと思う。
ただ、気付きたくなかった。
気付いていないことにしたかった。
あの子の名前を出したことに深い意味はなかった
はずだけど、どこかで胸騒ぎを感じたからこそ、ふと口に出てしまったのかもしれない。
だってそんな反応するなんて思わないじゃない。
貴方のことをどれだけ隣で見続けたと思ってるの。
気づいてないとでも思った?
ほんの少しの間に意味なんて持たせないでよ。
目を合わせて?こっちを見てよ。
いつもみたいに「考えすぎ」「杞憂だよ」って笑ってよ。
少しの言葉尻を捉えて悪く考えすぎる私を、大丈夫だよって安心させてよ。
チョコレートのように甘い関係は、口の中で溶けてなくなるそれのように、いつしか消えてしまったみたいだ。
プラリネのように舌の上に少しのざらつきを残して。
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