れむ

140字で伝えきれない想いをしたためる

れむ

140字で伝えきれない想いをしたためる

最近の記事

声の記憶

ホルモンバランスの乱れだっていうのはわかっていた。 毎月じゃないにしろ、たまにそういう時があるのは長年の経験で自覚している。 自分ではどうにも出来ない不安、孤独、焦燥感。 世界中の誰からも愛されないという根拠のない確信。 どうしようもなく誰かを欲しているのに、足枷を嵌められたように自分からは動き出せない。 「声が聴きたくて…5分だけ電話していい?」 何度も打っては消して、 送信ボタンが押せないままそこに居座って数時間。 そもそも声にコンプレックスがある私は電話が苦手だ。

    • いつか終わる恋

      これはいつか終わる関係だ。 始まった時からそれはわかっていた。 関係性を深めていくあいだ、 寝ても醒めても相手のことを考えて、 時に涙を流し、 時に思い浮かべては笑顔になり、 どれだけ真剣にその感情に向き合っても、 ふたりのあいだに「未来」だけはない。 目が覚めてまずLINEを確認する。 夜更かしな君からのLINEはいつも私が寝静まった後に返ってくる。 もう何ヶ月も途切れず、なんてことないやりとりが続く。 「おはよう」のスタンプは何もう何種類使ったことだろう。 今日は昼休

      • mirror

        来慣れない街で二軒はしごした。お酒を飲むと変わる?その質問に、変わるよ、テンション高くなる。そう答えた貴方は私から見たら少しもいつもと変わらなくて、それでもホテルに向かう足取りはいつもより軽かったのかな。 私の荷物を手に取って、反対の手には私の右手が繋がれる。 少し冷たい夜風の中、温かい手が心地良かった。 部屋に入った瞬間、壁一面の大きな鏡が目についた。あ。と思った。 普段から意地の悪い貴方のことだ。これを使わない手はないだろう。 嫌な予感は的中して、前戯の段階で最中の自分

        • さよならをあなたに

          今でも初めて会った日のこと覚えてる。 年末だった。例に漏れず寒い冬の日だった。 ビールバーで待ち合わせ、なんて洒落た指定をしてくれる人は私にとって初めてで、黄金色に輝く炭酸を片手に待つあなたの後ろ姿が、会話する前から愛しかった。 ビールは苦手で、と言うとハニーエールを勧めてくれた。初めて美味しいと思えるビールに出会えたのはあなたのおかげで、今でも感謝してる。 ビールバーを後にすると、お互い共通の趣味であるブランドのウインドウショッピングをして、彼の好きな日本酒のお店で乾杯し直

          信号

          帰り道、信号待ちで並んでふと足下に目をやると、 「大きな靴だなぁ」なんて自分との違いに思わず見入ってしまった。 私より5cmは大きいであろうその足のサイズと、比例したであろう身長の関係性について考える。 やっぱり背が高いと足も大きくなるのかな、なんてことを考えていると、その視線の途中にある手が自分のそれを絡めとった。 あ、手を見てると思ったかな、勘違いさせてしまっただろうかと顔を上げると、 「…せっかくなので」 と、照れくさそうな君が小さくつぶやいた。 それとほぼ同時に信

          プラリネ

          ずっとあなたの横顔を見てたから気付いてしまったんだと思う。 朝の情報番組では都心に新しく出来た商業施設を紹介していた。 色鮮やかな、もしくは少ない色味で洗練されたイメージのカフェやショップが軒を連ねていた。 声高にそれらを紹介するアナウンサー、見目麗しい女の子がショップの一つに入り、リポートを続ける。華やかな液晶画面の向こう側に見入って、あなたに声をかけた。 素敵だね。行きたいね。 今まで数え切れないくらい、様々な場所にあしをはこんだ。 海の近くの水族館、お花がいっぱい

          プラリネ

          貴方の言葉で御伽草子

          Twitterにて、それぞれがそれぞれの視点で昔話を描いたら面白いんじゃないかと言うのを見かけた。 例えば桃太郎がおばあさんの洗濯中に流れ着くまでの前日譚とか。 どの適職診断を受けても「あなたはクリエイティブな仕事がぴったり!」と言われるものの、一から何かを生み出すのが苦手なA型。 そう、テーマやお題を与えられてこそ真価を発揮するのです。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 継母たちがいたあの家もこの城も、居心地の悪さは大して変わらない。 王子が「見た目だけ

          貴方の言葉で御伽草子

          性癖について

          性癖 (せいへき)とは、人間の心理・行動上に現出する 癖 や偏り、嗜好、傾向、 性格 のことである。 近年では 性的嗜好 ・ 性的指向 を指すなど、セクシャルな意味での誤用が多い。 出典:Wikipedia あ、今初めて普段自分が使ってるのが誤用だと知りました。こうして新たな日本語の解釈が生まれ、浸透し、それもまた正解、となるんでしょうね。 いや、そんな話がしたいんじゃないんです。 性癖、ありますか?誤用の方の意味での。 「あの人の手マジで性癖!」 「その仕草性癖だわ」

          性癖について

          雨女の憂鬱

          昨夜の中秋の名月は見事だった。 8年ぶりにその暦と満月が重なったのだとネットのニュースは言っていた。 SNSのタイムラインはこぞって月の写真で賑わい、あるものはスマホの画質の良さを、あるものは一眼の腕前を自慢し合っていた。 こういう時に、その写真を送りたいと思える相手がいるのは幸せなことだなとも思ったりする。 結局写真が下手すぎて送らなかったけど。  例年その真円状の月を隠しがちな雲も昨日ばかりは身を潜めていた。そして一夜明けた今日も、見事な秋晴れであった。職場の大きすぎ

          雨女の憂鬱