見出し画像

アーモンド・スウィート ゲームとジャンケン

 (秀嗣の弟)博嗣も勉強が嫌いだ。ゲームをして居るとき、短い人生で一番の幸せを感じる。プ○イ○テーションⅤをいち早く買って貰った。ソフトも五つくらい持っている。全てRPGで、『ドラゴンクエストⅩ』も持っている。『ファイナルファンタジーⅦリメイク』も持っている。何周もやり込む派なので、飽きることはない。お兄ちゃんは熱しやすく冷めやすい性格なので、というより不器用なので少しでも行き詰まったら「なんだよ! このクソゲー!!」とコントローラーごと投げてしまう。博嗣は隣で見ていて不思議に思う。RPGなんてものは、アクションゲームやシューティングゲームでもない、カリカリしないでやれば難しいことなんて何もないのに、進まないと言って、怒ってコントローラーを投げるなんてある? 自分のゲーム音痴に気付かず、ゲームソフトやゲーム機の所為にしている。ときにはゲームが思い通りにいかないと、涙さえ見せる。敵が強ければ自分のレベルが低いからだし、先に進めない洞窟はクリアするクエストが終わってないからか、まだ冒険できるレベルに到達してないからだ。
 お兄ちゃんは自分より、きっと頭が悪いんだと思う。時々、お兄ちゃんではなく、胸の裡で「おい、秀嗣っ!」と呼び捨てにしている。ツッコまければやってられない。ゲーム機の所有者は自分だからだ。兄弟二人に買って貰ったものだが、毎日遊んでいるのは自分だ。兄は少し遊ぶだけで、直ぐ怒って四五日遊ばない。なら、ほぼ博嗣の物といって良いと思う。
 お兄ちゃんは、テレビゲームだけではなくスマホのゲームもボードゲームも全部、下手である。トランプすら駄目だ。どうしようもない。ただ、なぜかしら"引き"は強い。当たりを率く確率が、自分よりも近所の友達よりも多い。あとジャンケンも強い。将来、ビギナーズラックで大当たりを出してギャンブルにのめり込まなければいいがと思う。それだけが今から心配だ。
 博嗣は逆に、もともと直感で優劣が決まったり、勝敗が決まったりする遊びは嫌いだ。非科学的とも思えるそんな勝敗の決まり方は好きではない。技を地道に磨き、障害や強敵を克服する。努力したあとの成功がなければ納得できない。
 ゲームの、"チート"な無敵モードで遊んでも面白いと思えない。お兄ちゃんは無敵モードが大好きだ。サクサク攻略できて良いと喜んでいる。お兄ちゃんのような人の為にある、無敵モードだからいいだろう。アホでもバカでも、楽しませるのはメーカーの義務だろうから。メーカーのサービス?

 今日、お兄ちゃんは塾に行っていない。最近塾に行きたがり、やっと許されて塾に行っている。しかし一週間くらい前から、喜んで行っている様子ではない。どちらかと言えば、嫌々行っている。仕方なく行っているようだ。塾に行きたいと、泣きながら父ちゃん母ちゃんに訴えたから、いまさら行きたくないと言えない感じに見える。博嗣は学習塾なんかには行かない。平凡に区立中学に進み。義務教育を終えた後は、できれば公立の高校に行き、大学も偏差値45~60くらいの大学に行ければ良いと思っている。大学に行ってもゲームをして、幸せな四年間を過ごし、無難な会社に就職して、いずれ結婚して神田の家を出て、子供は一人から三人まで作って、幸せに暮らす。それで十分と考えている。悪くない人生設計じゃないか。
 そして今日も博嗣は二時間だけ、使われてない時間帯に、会社のパソコンでオンラインゲームをする。そのあと、小学校の友達と電話をしながらプレイステーションⅤでゲームをする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?