徒然諸々 『嫌われ松子の一生』文庫本上巻を読んで
山田宗樹さんの『嫌われ松子の一生』、文庫本上巻をいま読み終わりました。上巻までですが、読み終わるのに二ヶ月かかってしまった。わたしは所謂「嫌ミス」を呼ばれる小説が苦手なんです。幸、不幸は「禍福は糾える縄のごとし」と例えられるけども、先に主人公に不幸の連続があり、最期に幸せがある。この世に神様も仏さまもいらっしゃると思えるストーリーはなんとか読めるのだけども。先に主人公に幸せ、または平凡な日常があって、次々と不幸が襲い、中盤で好転して、好転したと思ったら直ぐに信頼していた親友、恋人、家族に裏切られ、終盤で更に不幸に合い主人公の社会的な信用も尊厳も地に落ちるような目にあって終わる。この世に神も仏もないのか…と思うようなストーリーは読んでいて辛くページが進まないです。
もともと、なぜ『嫌われ松子の一生』を今ごろ古本で買って(ブックオフで買いました(;^^)ヘ.. )読もうかと思ったかと言えば、大昔に婚活をしていた頃に、読書が趣味の女の人とカップリングが上手くいきそうになったことがありまして。その彼女の生涯ベスト10だったかベスト5に『嫌われ松子の一生』が入っていると教えられ。わたしは中谷美紀主演の映画は観たけども、"今更"原作は読んでないと答えました。映画を観たので分かった気になり、マツコデラックスのようになった川尻松子の姿と孤独のうちに亡くなった最期、「生まれてきてごめんなさい」と何度もアパートの柱に刻みつける姿を思う浮かべ、シリアスにしろコメディにしろ映画で十分の物ではないかと思ってました。そのカップリング成功寸前の彼女とは縁がなく、それっきりでしたけども。ウン十年かが経ち、ずーっと引っかかっていた作品でした。別に『嫌われ松子の一生』で意見が合わなかった、原作を読んでいなかったからカップが成立しなかったと思っていた訳ではありませんが、「ともかく読んで見て、映画と原作は別物だから」という真剣な表情が忘れられなかったのは事実です。と言う訳で買って読み始めました。
と言っても映画の記憶があるので、ずーっと不幸せで救いがないストーリーを覚えています。川尻松子が登場する最初のページから読むのが辛い。
中島みゆきの歌『ファイト』のCメロ『薄情もんが田舎の町に あと足で砂ばかけるって言われてさ 出ていくならお前の身内も 住めんようにしちゃるていわれてさ』、Dメロ『あたし男だったよかったわ 力づくで男の思うままに ならずにすんだかもしれないだけ あたし男に生まれればよかったわ」の歌詞が何度もリフレインします。
大川第二中学での田所校長から受けたレイプ、実際に修学旅行先の旅館のお金を盗んだにも関わらず教え子の龍洋一に裏切られ松子がお金を盗んだことにされ、才色兼備だったゆえに同僚からしっとされ罠に嵌められ中学を辞めさせられ。父、母、弟の紀夫からは誤解され、冷たくされ実家まで追い出される。が頭に浮かぶ上巻でした。
その他にも男たちのエゴが濃厚にある内容で、最初に出来た恋人作家未満の八女川徹也には自殺され(芥川龍之介っぽい理由で?)、徹也の友人の岡野健夫から半分八女川の復讐で不倫に利用され。中州のソープランドに自ら堕ちてゆく。救いに成ったかもしれない存在がソープランド『白夜』の支配人・赤木さんだけ。赤木さんと一緒に北海道に飛んだとしたら、そこからは幸せだったかもしれない。でも赤木さん恐い顔のおじさんだからな。反社の側の人ともいえなくもないからな。北海道で、追われて殺されてしまうかもしれないし、酔っ払いに絡まれたススキの女の子助けようとして刺されて殺されてしまいかもしれないし。松子が、またススキので働く羽目になるかもしれないし。一緒に北海道まで行かなかった。行かないで選んだ男(マネジャー兼ひも)の小野寺保は、結局刺し殺してしまう。(←下巻の、内容に入ってます)
上巻までの、川尻松子の人生はまったく救いがないです。SEXシーンも多いし。一応、松子は目を惹く美人という設定なので、美人ほど幸せになれないという「ルッキズム(外見重視主義)」への最近話題になっているあれこれも物語の中にいれてあると思いますが。またミソジニー(女性嫌悪ではなく、物語り的には女性蔑視)も入っているので、「性の道具」としての松子という存在。もしくは承認のされ方は、やっぱり辛い。
すぐにでも下巻を読んで、また書きます。
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