出勤前の朝に
目が覚めるような青空が眼球に飛び込んでくる。
脳内が真っ青に染まってしまいそうだ。
ごたごたの排気ガスに汚される前の、清らかなる群青。
これこそ早朝の醍醐味である。
毎日続けている早起きは、この景色を目にするためにあるといっても過言ではない。
散歩していると、黒と黄色の模様をしたハチのような昆虫が、その羽を高速でばたつかせている光景を目にした。
名を、オオスカシバ、という。
ホバリングしながらストローのような長い口で花の蜜を吸うのが特徴だ。
南米に住むハチドリのようなその飛行姿は、小さい頃から僕の心を高鳴らせる。
スズメガという蛾の仲間ではあるが、夜間に動くスズメガの仲間とは違い、活動時間は昼間がメインである。
フォルムといい、体毛に包まれた柔らかそうな体といい、最高にクールだ。
その羽ばたく姿を眺めていると、10秒と経たぬうちに空へ飛んで行ってしまった。
僕の背中にも、この空を飛べるような羽があったなら。
車に乗って仕事場に行き、労働なんてすることは無いだろう。
自由に大空を舞う。
小さい頃の夢だった。
そしてずっと、夢のままだ。
飛べない僕は、地道に歩いていくしかない。
車に乗って、職場に行くしかない。
まあ、たまに飛行機にでも乗って、空を飛べればそれでいいか。
時計を見た僕は、しぶしぶと玄関を後にした。
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