第1回 琴欧洲編/ブルガリア料理 トロヤン
第1回 琴欧洲編/ブルガリア料理 トロヤン
初めてのブルガリア出身力士として、2002年に初土俵を踏んだ、琴欧州(のちに琴欧洲と改名)。相撲はほぼ未経験ながら、202センチの長身、握力120キロの体を駆使し、約3年で大関まで昇りつめた。
また、その甘く憂いを帯びたマスクから、「角界のベッカム」と呼ばれて、絶大な人気を誇った。
14年3月の大阪春場所で引退し、年寄・琴欧洲を襲名。その後、鳴戸親方となり、17年4月、鳴戸部屋を創設した。そして、19年6月には、東京スカイツリーの近くに4階建ての部屋を新設して、現在は13名の若手力士を指導している。
7月の名古屋場所では、鳴戸部屋の3人の序ノ口力士が全勝で序ノ口の優勝決定巴戦で優勝を競うという出来事もあり、部屋は活気づいている。
さて、その鳴戸親方が推薦するのが、銀座にあるブルガリア料理店「トロヤン」である。
以前は、「ソフィア」(ブルガリアの首都)という店名で営業していた人気店だったが、名前も新たに18年2月、オープンした。
ホテルの1階という恵まれた立地にある「トロヤン」の店内は、高い天井に落ち着いたブルガリア調のインテリアで、ゆっくりと食事を楽しむことができる空間だ。
まずは、前菜。
「ショプスカ・サラダ」は、キュウリ、タマネギなどのフレッシュな野菜の上に、「シレネ」という塩気と酸味のあるチーズをおろしたシンプルなサラダだ。
次に、「スネジャンカ」。これは、パンの上に水切りしたヨーグルトとキュウリなどを混ぜ、のせたもの。濃厚なチーズの味わいが口いっぱいに広がる。
濃厚なチーズは、ぜひ、スペシャルドリンクと共に楽しみたい。
「ブルガリアン・カラービール」は、ブルガリアの国旗をイメージした、緑と赤の2色使いのカラフルなビール。ほのかに甘味を感じる味わいで、とても飲みやすい。
店にもちょくちょく顔を見せるという鳴戸親方のおすすめメニューは、「ムサカ」だ。
ギリシャ料理としても知られるムサカは、ひき肉とジャガイモをオーブンで焼いたもの。ギリシャに隣接するブルガリアでは、ヨーグルト風味にアレンジし、さっぱりした味付けになっている。
「ムサカはママの味。そう、おふくろの味です(笑)」
とは、鳴戸親方。
鳴戸親方がムサカと合わせるのが、「ラキア」というブルガリアのブランデー。店では、「ラキアソニック」としてハイボール風でも提供しているが、親方はロックで楽しんでいるとのこと。
締めは、ブルガリア全土で親しまれている煮込み料理「カヴァルマ」。豚肉、鶏肉にタマネギ、トマト、パプリカなどの野菜を加えて、ワインで煮込んで、最後に卵を落とす。パンと一緒にいただけば、濃厚な味が後を引く。
ところで、店名の「トロヤン」とは、ブルガリアを代表する陶器の産地で製法、その製法や名称を指している。首都・ソフィアから、車で2時間ほどの山奥にある地域、トロヤンで作られた陶器は「トロヤン焼き」と呼ばれているのだが、「トロヤン」で使われているすべての食器は、トロヤン焼きの陶器である。
色鮮やかで独特の紋様の陶器は、料理をさらに美しく彩っている。
記念日など特別な時だけではなく、普段使いにもピッタリな、くつろげるオアシス。
それがトロヤンだ。
撮影:山口真由子
\今回訪ねたお店/
ブルガリアンダイニング トロヤン
東京都中央区銀座1-9-5 ホテルユニゾ銀座一丁目1F
TEL:03-6264-4844
◆WEB SPORTIVA連載はこちら◆
向正面から世界が見える~大相撲・外国人力士物語
ブルガリアから来日→角界入り即断。琴欧洲は運命の出会いを果たした
◯鳴戸親方(2)
「若い衆の頃は地獄でした…」琴欧洲はなぜスピード出世できたのか?
◯鳴戸親方(3)
元大関・琴欧洲が相撲人気に「怖い…」。何が支えているのかわからない
鳴戸勝紀(なると・かつのり)
元大関・琴欧洲。本名:安藤カロヤン。1983年2月19日生まれ。ブルガリア出身。2mを超える長身と懐の深さを生かした豪快な取り口と、憂いのある眼差しで相撲ファンの人気を集めた。幕の内優勝1回、三賞受賞5回。2014年3月場所限りで引退、年寄・琴欧洲を襲名。同年、日本国籍を取得し、ヨーロッパ出身力士として初めて日本に帰化。2017年、鳴戸部屋を創設し、後進の指導にあたっている。