還暦まであと1周のおっさんがメイクを始めてみた話
春ですね。
何か僕も春から新しいことを始めてみたいと思い、メイクに挑戦してみることにしました。(といってもアイメイク、リップ、チークなどの盛るやつじゃなくて、肌を綺麗に整えるベースメイクです)。
以前からメイクに興味があったのはもちろんですが、僕が今年から研究指導する大学院生女子の研究が「メンズコスメのプロダクトデザイン」、メンズメイクに関する価値観の再定義だったので、指導の参考になるという大義名分もあったりします。
ぼくは大学教員とは別にグラフィックデザインのアートディレクター(デザイナー)の仕事を20年以上続けていて、特にJ-POPのCDジャケットの撮影を多く手がけてきたこともあり、女性・男性問わずヘアメイク技術をたくさん見てきましたし、自分の宣伝写真や取材写真を撮影してもらうときに、そこまで多くはないですが、ヘアメイクアーティストの方に実際にメイクをお願いした経験もあります。
しかし、自分で日常のためにメイクをするというのは、本当に初めてですし、考えてみれば(考えてみなくても)僕は今年49歳のおっさんです。去年自分の干支(うさぎ)を過ぎましたので、あと1周まわればついにあの還暦です。
そんな完熟しきったおっさんがどうメイクを始めればよいのか。ひとまずインターネットを検索してみることにしました。
自分は肌が悪いので「敏感肌」「石鹸で落ちる」などのワードで検索すると、ETVOSというブランドのランキングが高かったので、まず初心者はこの1つのブランドに絞って買おうと思いました。(ここであえて「メンズメイク」で検索しなかったのは、メンズメイクのブランドしか検索結果として出てこないと、選択の幅が狭まる、と直感したからです。)
商品をネットで調べるだけでも、わからないことだらけでどうしようもなかったので、ひとまず直営店に行ってみました。そこにいたビューティーアドバイザー(というのかな、昔は美容部員といいました)の店員さんに尋ねてみました。年齢的には自分が教えている大学の学生と変わらないような若い方です。
「あの、おっさんでもメイクできるようになりますか?」
店員さんはすごく優しく「はい、問題ないです。一からなんでも教えますよ。」と笑顔で言ってくださいました。
てっきり肌のメイクというとファンデーションを使うのだと思ってたら、男性のベースメイクの場合、塗った感が出過ぎてしまうので、化粧下地をなじませてから、あとはコンシーラーで作っていくほうが良い、というアドバイスでした。もうここで自分の思い込みダメ!前提情報外そうと思いましたね。
店舗で見本としてメイクをひととおりやってもらいました。化粧下地って、ただの潤滑剤のようなものだと思ってたのですが、これを塗るだけで肌のテクスチャーがどんどんさらりとしてきて、細かい凹凸は処理されていきます。おっさんにとってみれば驚きの体験です!
コンシーラーは複数色のパレットを混色しながら、部分ごとに色を変えてのせていきます。ヒゲ跡の青みにはイエロー系、赤味にはグリーン系というような。
これをやってもらってて感じたのですが、完全にPhotoshopの世界です。アルファチャンネルでマスクを切って、補色のトーンカーブを当てていき色ムラを無くす。いや逆で実際のメイクをデジタルにしたものがPhotoshopなのか?
いずれにせよ、普段やっているフォトレタッチの知識が役に立つとは思いつきませんでした。
最後はパウダーをブラシでなじませながら、全体を補正する。
これは、最後に均一な粒状レイヤーを足して、全体の合成画像のテクスチャを整える作業にすごくにています。
Photoshopに例えすぎですみません。
店員さんは一つ一つの作業のあらましを、ていねいに持ち帰り用の手書きメモとして記録してくれました。
知らないことだらけなので、「勉強になります!」と何度も感謝の気持ちを伝えてたのですが、店員さんもおっさんがいちいち技術に感動するものですから、とても意欲的に教えてくれました。自分よりずっと若い人に、自分が知らない知識を教わるのも心地よいと思いました。年齢に関係なく、先達の知見者に敬意を示し、学ぶ姿勢は大事だなと思います。
メイクをするようになって感じたことをまとめておきます。
1 あがる!
なによりメイクという行為、プロセス自体がすごく楽しいです。自分の顔の気になる部分がだんだん補正されていき、アップデートしていく感じがとてもあります。今はまだやり始めの(メイクデビューした高校生みたいに)楽しい時期なのでかもしれませんが、メイクという行為自体にクリエイティビティを感じます。
2 盛り上がる
メイクの道具を大学の学生や職員さん、あるいは会社の女性社員に見せると、誰ともなく寄ってきてコスメの話で盛り上がります。ブランドや効用だけでなく、パッケージやボトル、限定デザインなど、とにかく話題の幅が広いです。「私も同じの使ってます」と学生に言ってもらえたり、「次はシェーディングですかね。」と沼にハマらせようとする方もいます。おそらく多くの女性が、僕ら男性がメイクをすることを否定的に言ってきません。むしろ歓迎してくれる気さえします。
3 落とす時気持ち良い
そもそも僕のメイクはファンデーションもしていなくて薄いですし、している最中は全く気にならなかったのですが、家に帰ってメイクを落とすとめっちゃ気持ち良いです。喉が渇いたときに飲む1杯目のビールくらい爽快感があります。逆にいえばメイク中は無意識に肌を緊張させてたのだなと思います。外向きの顔と内向きの顔の2つのペルソナ(仮面)ができるのが、ちょっとワクワクします。
4 モノとしてかっこいい!
ポーチにメイク関連ツールとともに、コスメを収納してみました。ガジェットがそろったみたいでなんだかかっこいいです。そもそもパッケージデザインやボトル、パレットのデザインがテクスチャや色にこだわっていてとてもかっこいいです(語彙力)。形から入ってみるというのもアリかなと思います。むしろ製品の色や形でアガる。
これらおっさんの自分にはすべて始めて発見したことなのですが、メイクを普段される女性にとって共感できる項目はあるでしょうか? 一度聞いてみたいなと思います。
メンズメイクというと、K-POPアイドルのような姿を思い浮かべ、若い人のためのものだよなあ、おじさんがするのは気持ち悪いよなあ、と気が引ける中高年の男性は多いと思います。またメンズメイクに否定的な女性の方もいらっしゃると思います。これまでの価値観ではそうあったので当然やむを得ないと思います。
しかし、パリっとした清潔なシャツを着たり、革靴を磨くようにメイクをしてみませんか。
あるいは、デジタルガジェットなんかを収集するようにコスメを集めてみませんか。
メイクは男性の「好き」にもけっこう追従してくれると思いました。
おっさんでも引け目を感じることなく、堂々とメイクができる。
未来のことのようでしたが、もうとっくに現実の話でした。
最後に僕が使っている「ガジェットたち」を紹介します。
↓↓↓
ベース
コンシーラー
パウダー(大学の同僚、鈴木マサルさんデザインによる限定パッケージ)
アイブロウペンシル
ポーチは無印
<本稿とほぼ関係ないですが(Photoshopぐらい)、僕の著書よかったら読んでください。>