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生音。
もともとacousticという単語の意味は「音響」という意味ですけど、今は「生音の」という意味で通用していますよね。アコギって言うようになったのは80年代以降だと思う。それ以前は「フォークギター」。「エレキ」=electricがその「機能」的な形容詞なのに対して「フォーク」=folk songという「用途」を表しているのが面白いですよね。そう考えると、当初はただの「ギター」でしかなかったものが、エレキギターの登場のせいで相対的に呼び名を考えなくてはならなかったのかなと思ったりします。ともあれ、エレキとアコギの間には暗くて深い河が流れていて、行き来できる人はそれほど多くなかった。プロではいましたけどね。特に日本では少なかった気がします。
ひとつの大きな理由は、マイク周り。生音(の良さ)をどう集音してそのままにオーディエンスに届けるか。単なる楽器とその弾き手だけにとどまらない条件が新たに生まれた気がします。楽器そのものの鳴り、マイクの特性、プリアンプ、ミキサー、スピーカーの特性…、きりがない。ライヴステージにおけるアコースティックの難しさは、弾き出した音をかなり早い段階で人の手にゆだねざるを得ない、という点にありました。
これを弾き手の手元に引き戻したのがエレアコ。いまやエレアコというカテゴリとして成立してい(る気がし)ます。エレキのピックアップを流用した時代に始まって、貼りピエゾ、ギターマイクなど発展を重ねてきたわけですが、現在は実に多岐にわたっていろいろな製品が流通していますね。アンダーサドル型、サウンドホールに取り付けるマグネチック型、それらの合わせ技型…いかに生音を活かして、望む通りの音を客席に届けるか。生音ならではの空間感、アンビエンス。これがどこまで出せるかというのがアコギ用のピックアップに求められてきたハードルでした。
僕自身はMorrisのCP-2という貼りピエゾ(コンタクトピックアップ)に始まり、これまでほんとうにたくさんのピックアップを試してきました。「おお!」という感じで驚いたのはシャドウの2500Eという貼りピエゾ、LR BaggsのiBEAM、同じくLyricなど、貼る形式のものが好みでした。アンダーサドル型は好みのものになかなか出会えなかった。結局オベーションとか、昔のタカミネとか、ヤマハの高いやつとか、つい最近のゴダンとかアコースタソニックとか、ギターというよりピックアップ~プリアンプの音として成立しているものを選んでしまう。それはそれでライヴではいいんだけど、やっぱり自分の好きな一本の音ではないから、ループしますよね、その欲求不満が。
もう今年で30年になるんですけど、ピンククラウドが解散するというので出かけていった94年の9月17日、最後の野音の日の午前中はいい天気で、まさかそのあとあんな大雨になるとはとても思えない感じでした。その日に新大久保のクロサワでD-45を買った。94年製。これまでに4回くらいピックアップは替えたかな。iBEAMとか気に入っていたんだけど、結局初期ロットのファーストユーザーだから、だれもその寿命がわからない。10年目にノイズがひどくなったので交換。いまはアンセムを搭載しています。
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このD-45がスキャロップブレイシングだったので、自分の好きな時代の音と違うことに気づいたのは、使い始めて数年経ってからでした。繊細さはあるけどパワフルではない。うーん。とはいえ今更買い替えるのはなあ…的な感じで。そんなときに日高君に出会って70年代のパワーと45の倍音を持ったギターを作ってもらいました。ジャーマントップとか思いつく限りのもの詰め込んで。これもラッキーなことですね。2008年。もう16年経ちました。当時坂崎氏がイチ推しだったダンカンのマグマイクというやつを手に入れて、ずっと使ってきました。これは今はやりのマグネチックとコンデンサーマイクのデュアル型で。時代の先を行くものでした。音はいいんですけどね。ものすごく重いんですよ。今回16年ぶりに外してみて、ギターが軽いのに驚いた。大リーグ養成ギブス(笑)。
そのマイクを外させたのがカルロスピックアップ。その存在は知ってはいたんです。エリッククラプトンの000に搭載されているピックアップとして。超高級ピックアップなのでなかなか購入には踏み切れませんでした。ところが、この5月にあるマーティンマニアのフォーラムに書き込みしたら、ピックアップ作ってるんだけど興味ある?的なフランクな感じで声かけてくれて。最初はまさかご本人とは思わず、英語の勉強的に思ってやり取りしてたんだけど(すみません)、リンクたどっていっていやー本物だ!みたいな感じになり。いまはもうセミリタイアしてるしその気になった時しか作らないから、なんて話で始まって、オーダーメイドになっているエリッククラプトンモデルを制作していただきました。
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ネット上でもたくさんカルロスピックアップを搭載したギターの音を聴くことができますけど、僕が最初に驚いたのはその音の太さとナチュラルさ。ピエゾでアンプリファイドしたやつは太くはなるけど生っぽくないというのがよくあるパターンですが、カルロスピックアップは驚くほど太くてかつ生っぽい。もともとフラメンコとかいわゆるスパニッシュギターのガット弦のテンションでも行けるのを狙っているからか、単音の立ち方が太いのにストロークでも破綻しない。素晴らしいです。問題は自分の技術がこれについていけるかどうかですね。文字通りごまかしがきかない感じ。練習します^^;
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そんなわけで16年ぶりにサウンドホール周りがすっきりして。やっぱり生ギターの見た目はこうでなくっちゃ、と勝手なことを思っています。
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