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バイアス。

同世代以上の人なら、高級オーディオのカセットデッキに「バイアス」つまみや機能がついていたのを思い出すかもしれません。

「偏り」ですね。上のオーディオで言えばイコライザーのピークをどこに設定するか、的なところだった気がします。

今年2冊目の「思考の穴」。忙しいのと体調不良に振り回されたのに加え、ちょっと真面目に読みすぎました(笑)。

結論から言うと、とても面白く読みました。

正月、保奈美さんの言葉から知った「流暢性バイアス」に始まって、かんたんな言い方をすれば、いわゆる「思い込み」がなぜ起こるのか。という話。で、こういう類の本を読んでる人はおそらくほぼ全員が「どうしたらそういう思い込みを避けられるのか?」ということに対する答えを求めて読んでいると思います。

読み始めて最初に引っかかったのは「認知心理学で世界をよくすることはできますか?」という問いがあったこと。一昨年くらいだったかな、もうちょっと前か、ファクトフルネスという本が流行りましたよね。

21世紀になってもうすぐ四半世紀になろうとしているわけですけど、日常的に世の中が悪くなっている的な報道がメインなので、刷り込みがずいぶん起こっている状況に対して、そんなことないからちゃんと知りましょうよ、という感じの本がずいぶん売れたと思います。

高校生に対しても、なんとかポリシーの中に「生きる力」的なものを育てるという大学が増えて、いわゆる「知識」よりも「知恵」というか、「どんな世の中になればいいのか」ということを考えさせようとしているところが増えたと感じます。「協調」じゃなく「協働」。まあそりゃわかってるに越したことはないんですけど、環境による差は本当に大きいから、はっきり言うと酷だなと思っています。入れてから育てて欲しい。

話を戻すと、この本の中でも、具体的な例とともにそのバイアスのあれこれが説明されているわけですが、そのサンプルへの共感はやはり経験に比例する気がします。当然、うまくやろうとするなら経験値が高いに越したことはないけど、経験値が高いからうまくいくとは限らない、というのが難しいところ。間違え続ける人は間違え続ける。

読んでいて頭が痛くなるほど、いかに「思い込み」で日々暮らしているかがわかります。同時に、「自分が思っているほど自分の言葉は相手に刺さっていない」というのも、胸が痛いけど納得。行動のあれこれはコミュニケーションにおけるすれ違い行き違いのあれこれでもある。自分1人だけなら別に失敗とかわからないですからね。

近藤麻理恵さんの話まで出てきますが、モノをたくさん持っているのは「保有効果」の心理。行動経済学まで出てきた上にここでも「損したくない」心理を言い当てられてる(汗)。まあごくごく平凡な人間だと思い知らされました。

読んでいく中で一番確実なのは「直接聞くこと」って「ですよね」以外にない答えなんだけど(苦笑)、今の若い人の間ではこの部分が極端に差があるという気がします。要は聞かなくてもいいやって人と聞きたいという人の差が極端に乖離傾向があると思う。

自分自身、若い頃は経験値も低い、思い込みは強い、もの知らない、人に聞く術を知らない、でしたけど、やっぱり失敗を重ねたり、周りの友人や先輩たちのおかげで、昔よりはまともにしてもらった気がします。そういうやりとりをたくさんできる時期というのが必要だと思うけど、インターネットの時代で中途半端な一方通行のコミュニケーションを四六時中見ていると、あれは絶対に良くないと思うんです。ブツっと途切れてしまうコミュニケーションに違和感を感じない人がいる。僕はそれを怖いと思っています。この本の先生の講義を聴きにきてよりよく生きたいと思う人はいいけど…まあたぶんよりよくとかより危険回避ですよね。でもそれでもいいと思う。

「正解がない」ということは自分が決めるしかないということで、溢れまくるバイアスの波を掻い潜って、正しい選択、というより出来るだけ後悔しない、くらいかな。ブレない?そんな決め方ができる人でいたいですね。勉強になりました。

トップの写真は、表紙の隅にあった言葉です。「よりよく生きるためにより良い理由付けをする方法」…よく生きるためによく考えないといけませんね。

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