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カシマスタジアムに紙チケットを忘れるという悲劇

2022年天皇杯準決勝、カシマスタジアムで行われた鹿島アントラーズ×ヴァンフォーレ甲府の試合のお話。

このゲームのキックオフは17時半。

当初の予定

その日は昼から15時過ぎまで水戸で仕事があって、その後にバイクでカシマスタジアムに向かう予定だった。バイクで水戸からカシマは1時間程度。余裕のタイムスケジュールだ。

天皇杯は紙チケットなので途中でセブンイレブンに寄り、スタジアムでハラミメシを食べてウォーミングアップを見るくらいの余裕はある。

しかしこの日は雨予報。雨だったらバイクでは行きたくない。鹿島臨海鉄道の大洗鹿島線で水戸から鹿島に向かう事になる。

仕事中、天気を確認しながら「これは残念ながらバイクでスタジアムに行くのは難しそうだな、電車の時刻を調べておこう」と時刻表を調べた。

電車の時間

①15時34分水戸発、16時57分カシマスタジアム駅着。
②16時32分水戸発、17時41分カシマスタジアム着。

このいずれかの電車に乗る事になる。

①に乗れればキックオフに間に合う。しかし仕事の都合上けっこう厳しそう。②だとキックオフから15分くらい遅れての着席になりそうだ。

「これは前半15分くらいまで見れないのは仕方ないかな」と思いながら仕事をする。

仕事が終わる

仕事が終わった。時刻は15時30分。
水戸駅南口の広いペデストリアンデッキを走る。

走りながら色々と想定する。

「間に合えば何かしらスタジアムで飯を食べるくらいは出来るか。間に合わない場合は水戸駅で何かを腹に入れて時間を潰すしかないか。」

「あと大洗鹿島線のカシマスタジアム駅はSuicaでは出れないから、水戸駅で紙の切符を買うのがベストだな。でも最悪はSuicaで入って後でどうにかするか」

そんな事を考えながら走る。

水戸駅の改札に着く。15時32分。あと2分。大洗鹿島線の紙の切符を買う時間はギリギリ取れそうだ。

急いで電車の切符を購入する、あと1分。ホームまで走る。

大洗鹿島線のホーム

大洗鹿島線のホームに着く。思ったより余裕で乗れた。出発まであと20秒くらいはあるだろう。これでキックオフには確実に間に合う。

車内は通学の高校生と鹿島の試合を観に行く人で半々くらいだろうか。そうか、通学の帰路の時間か。

そんな事を考えて座席に座ってホッと一息ついた瞬間、強烈な考慮漏れが脳裏によぎる。

天皇杯は紙チケットで、私はまだ紙チケットに引き換えていない。
これはマジでヤバい。なんてったってカシマスタジアムだ。

そもそもバイクで行く予定で、その道中のセブンイレブンで紙チケットに引き換える予定だったのだ。

電車の出発まであと10秒か15秒くらい。自分の頭の中で様々な思いが巡る。

「カシマスタジアム近辺のセブンイレブン……、スタジアム北のセブンはとうの昔になくなった。南の方に少し行った所に1つあるか。そんなに遠くない気がするけど、でも徒歩で行った事は無い。徒歩だと何分かかる?ググるか、いや、ググってる間に電車が出発しちまう」

「電車の切符を買わないでSuicaで入っちゃえばググる時間くらいは捻出できたか、ミスった。いやそれは今はどうでもいい」

「ここで電車を降りて次の電車にするとキックオフから15分遅刻は確定。一旦カシマスタジアムに向かってセブンまで歩く方がキックオフには間に合うか…。でも外は雨。セブンが遠かったら地獄だな。」

「最悪なパターンは、私の想定するスタジアム南のセブンイレブンが閉店してるパターン。もう試合を見る事すら出来ない可能性が出てくる。」

「水戸駅近辺には確実にセブンイレブンがある。15分遅刻するけど、そっちが安全策か?」

「どうする?どうする?もうあと3秒くらいで決断しないといけない。降りて15分遅刻の安全策か、とりあえず向かってみる博打か……」

結局、私はキックオフに間に合う可能性に賭けてそのまま電車に乗る事にした。カシマスタジアム近辺のセブンイレブンに向かう事にした。

カシマスタジアム近辺のセブン

電車が走り出し、運命は決まった。

①15時34分水戸発、16時57分カシマスタジアム駅着。(紙チケットをカシマスタジアム近辺のセブンで引き換えなければならない。)

このパターンだ。

電車の中でGoogleマップを開いて、カシマスタジアム駅から最寄りのセブンまでの徒歩での時間を調べる。

1.4キロ、およそ17分くらいらしい。雨である事を考慮すると20分。普通に歩いて往復したら40分。キックオフには10分遅刻。雨の中走ればキックオフには間に合うか……。

走ろうか、歩こうか。少し考えながら電車に揺られる。

とりあえずめちゃくちゃに遠いわけではなくて一安心した。セブンも営業してるようなので本当の本当に最悪なパターンは回避した。

カシマサッカースタジアム駅着

そして定刻通りカシマサッカースタジアム駅に到着。キックオフまで約35分。

セブンまでの道のり、結局少し走る事にした。こっちの選択をしたからにはキックオフに間に合わせよう。という心持ちになった。

雨の中をセブンイレブンまで軽く走る。キックオフに間に合えば良いので、懸命に走る必要は無かった。

途中、「鹿嶋まで来て何をしてるんだろう」という気持ちになる。「これならバイクで濡れながら来た方がマシだったな。」という痛恨の気持ちにもなる。

そんな中、歩道をジョグする私の横をトラックが走る。拍子に猛烈な水しぶきを浴びた。

ここで心が折れた。「家でゆっくり見てた方が良かったな」「というか天皇杯なんで紙チケなんだよ、JFAクソかよ」「ってかなんで17時半キックオフなんだよ」と、ネガティブな感情が一気に押し寄せる。

セブンイレブン着

いよいよ目当てのセブンイレブンに着いた。17時11分。

トラックの水を食らって落ち込んだテンションだったので、どうにか自分のご機嫌を取る方法は無いかなと思った。

見つけた。スーパードライを見つけた。

「私はここにチケットを引き換えに来たのではない。スーパードライを買いに来たのだ。」

と思う事にした。チケットの引き換えと、スーパードライを購入した。

そこからは「キックオフは間に合わなくてもいいから酒を飲みながらゆっくり歩こう。」というテンションに切り替えた。

走るのはやめて、バナナムーンゴールドでも聞きながら、スタジアムまでの道のりをゆっくり酒を飲んで歩く事にした。

「スーパードライの雨割りも悪くないか」なんて思いながらバナナマンの愉快な話を聞く。

雨に打たれながらビールを飲んで、いつのまにかスタジアムに着いた。

時間はぴったり17時半、スーパードライもちょうど飲み終わった頃だった。カシマスタジアムからはチーム名を一生懸命にコールする応援の声が聞こえる。

その応援を聞きながら、「色々大変だったけど、まぁいっか!」という気持ちになれた。

その時のスーパードライは、最近飲んだどのビールよりも何故か美味しかった。

皆さんもカシマスタジアム×紙チケの時はお気をつけて。

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