新婚1年38歳、癌になる! #007
二重チェックはヒューマンエラーを減らすための重要な手法となっている。これはどうやら医療の現場でも当然のようで、当たり前のようにそれは行われた。
2度目の胃カメラである。
前回の胃カメラから2週間しか経っておらず、病巣の位置もしっかり写真におさまっている。それにも関わらずもう一度、胃カメラを行うのである。
勿論これは、患者を苦しめようという医者のサディズムから生まれた医療行為ではない。万に一つも起こさないという医療従事者の矜持である。
後で怒られないようにしっかりと懇切丁寧に充分な補足をしておくと、前回の胃カメラは別の医療機関で行っており施術したドクターも別である。主治医が自らの手と目で確認するというのは当然ということなのだろう。
自身の仕事に、誇りと責任を持つ素晴らしい姿勢である。よく不具合が発見され、そのたび二重チェックをするといっている某ソーシャルゲームの運営には見習っていただきたい。
2度目の胃カメラ、慣れたものである。一度喰らった技は二度と喰らわないドラゴンボールの天津飯のごとく、胃カメラは何事もなく順調に進んだ。空気を胃に入れられたときにゲップを我慢する指示を受けた時もゲップで返事をするのを忘れない。
とはいえ完全に無傷とはいかない。天津飯も、セルが放つかめはめ波には飛び込んで仲間を守ることはしなかった。無理なものは無理なのだ。
終盤に差し掛かり嘔吐反射が出てしまう。当たり前だがこれが非常に苦しいのだ。
ここで看護師が背中をさすってくれた。手当ての語源は患部に手を当てて治療をしたという俗説があるようだが、この行為のおかげで苦しさが和らいだ。
理屈を求めるのであれば背中に触れることでオキシトシンが分泌されストレスが緩和されたということなのだろうが、医療行為の重要性を感じずにはいられない。
前回の胃カメラでは背中をさする行為というものはなかった。この行為があろうがなかろうが、結果や時間などに大した違いはないだろう。ただただ患者が少し楽な気がするというそれだけなのである。
しかし、それがありがたい。看護師の能力というのは、日々の業務を適切にこなすという他にも、こういった気配りというものが重要なのかもしれない。
とはいえ、実に給与に反映しなさそうな技術である。現場の事情はわからないが、看護の本質というものをしっかり実行できている者が適切に評価されていてほしいものである。
多少の苦しみはあったものの無事に胃カメラは終わった。先日、妻と大乱闘をしたドクターであったが、医者というのは例え患者が極悪人でも誠実に対応するのだ。
私に対してもそれは同じで終了後ありがたい一言をいただけた。
大変お上手でしたよ。
患者にも技術が要求されるのが胃カメラである。
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