生きること、学ぶこと
スキーマ(schema)から学ぶ英語とは
〜スキーマとは何か? どのように習得するのか?〜
私たち人間は、推論によって知識を自分で増殖していく力がある。子供は大人に母語を教わらないでも、自分の力で学習できる。アナロジーを使うとき、それまで蓄積した知識を使う。この知識は記憶として存在しているというよりも意識下にある。スキーマである。言語習得のために、スキーマは鍵となる。それぞれの言語には独自のスキーマがある。今井むつみ「英語独習法」から学んだことである。
以下に、英語を覚えるための必要なスキーマを紹介していきます。スキーマを覚えることは、英語文化を身につけることでもある。英語と日本語のスキーマの違いを一つずつ覚えていくことの面白さがある。
その1
可算、不可算文法のスキーマ
外国人には、これが一番難しいスキーマである。母国語の人は、「文脈」によって判断する。「文脈」による判断とは、本当に難しい。でもヒントはある。対象に関して個別のことを言いたいのか、その集合体のことを言いたいのかを考える。とはいえ、次のようにデフォルトで決まっているものもある。
(ややこしいのは、このデフォルトが状況によっては変化することがある。)
可算:egg/ idea/urge/wish
不可算:broccoli/cauliflower/evidence/furniture/jewelry/chocolate/desire/
knowledge/wisdom
両方:cabbage/ lettuce
その2
共起のスキーマ
単語には、文章化したときに相性の良い、名詞、動詞、副詞、前置詞、修飾語などが必ずある。組み合わせが頻繁に起きるもの。「共起」するという。
(例)
pursue は、carrier, goal, degree, educationと共起
chaseは、cat, rabbit, ball, packと共起
strong は、 will, determination, friendshipと共起
instinctが主語になると、共起は、guide, warn, drive
( intuitionの時はこれらの動詞は出てこない。)
その3
頻度のスキーマ
当然のことである。どのくらい頻繁にその語彙や文章が使われいるかということである。本書ではコーパスの活用を薦める。日常生活の中で、色々なシーン(新聞、テレビ、学術、文学など)で使われる頻度が調べられている。その時の文章、文脈、構文、文法などである。AIを使ったものと学者たちが手作りで作ったものとがある。ここにも人間とAIという問題がある。
その4
抽象名詞のスキーマ
本能、直感、知識、能力などのスキーマは難しい。
Insight, knowledge, wisdomは、Devineやgodとは、どれが結ぶか?
inspirationは、どれと結ぶか?
fascinate, valuableは?
urge, impulse, desireで、fear, angerと結ぶのはどれか?
(例)
instinctは、survival, killer, maternal, predatory, protective, herding
(生存、殺人、母性、捕食、防御、群れなど動物が本来持っている性格)
intuitionは、geometric, moral, intellectual
(人間が生来持っているものではなく?経験から学習されるもの)
その5
名詞の階層構造からのスキーマ
これによって英語の文化と日本語の文化の違うなどがよくわかる。
例えば、entityという名詞は、object(全体として数えられる)かsubstance(数えられない)かを、physical(生き物)か、abstract(抽象的なもの)かよりも優先する。日本語の上位感覚とは全く異なる。
その6
行為、、状態、動作のスキーマ
日本人がよく間違えるスキーマである。行為の表現は、英語は、様態動詞と移動の前置詞で表すが、日本語は副詞を使う。
A bottle entered the cave, slowly floating.(日本英語)
A bottle floated into the cave.(英語)
状態と動作のスキーマの例を挙げる。
she is wearing a red dress. (状態)
she is putting on a red dress.(動作)
特に重要なものは、共起と頻度であると今井は指摘する。
スキーマを自ら見つけることが、すなわち英語学習であると。
さて、ここでスキーマの話は終わるが、興味深い指摘があった。
Machine learningはするが、Machine studyingはできない。
machineはlearnできるが、studyはできない。 どういうことか?
学ぼうとする意志がなくても、自然に覚えた場合や誰かに教えられて覚えたときに英語ではlearnを使う。一方、studyは自分で探究するという意思が必要である。つまり、生成AIはlearnしかできないのである。
意志のないものは、スキーマを覚えようとはしない。人間は個人の意志によってスキーマを開発していく。