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作業療法士の仕事



 いつもお世話になっているK氏から作業療法士(Occupational Therapy:略OT)の仕事について学びます。しかし、OTの仕事は幅広くかつ奥深く人間活動の多様なものを対象にしますので簡単にまとめることはできません。
この活動領域は社会の変化に沿って常に対応の変化を要求されるのです。

OTには3つの源流があります。

 一つは、欧米で「道徳療法」と呼ばれていた流れです。フランスの精神医科のフィリップ・ピネルが行った道徳療法(Moral Treatment)は、精神障害者の収容施設における人道的な処遇改善の運動が中心にありました。日本では、松沢病院(元東京巣鴨病院)での精神疾患患者の無拘束化がこの流れにありました。

 二つ目が、19世紀にイギリスのウィリアム・モリス (William Morris) の「アーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement)」です。ウィリアム・モリスは産業革命を批判して、中世の手仕事に戻り、生活と芸術を統一することを主張します。
その後、建築家のジョージ・バートン (George Barton) が、「治療的なアーツ・アンド・クラフツ」を障害者に活用します。バートンが「Occupational Therapy」という名称をつくります。柳宗悦の民藝運動もモリスの影響下にありました。

The Influence of the Arts-and-Crafts Movement on the Professional Status of Occupational Therapy / Barton Responsible for the Term Occupational Therapy 

 三つ目がジョン・デューイ(Jhon Dewey)の経験です。デューイの教育理念である「なすことによって学ぶ(Learning by Doing)」は、作業療法の理念と共通する部分があります。デューイの教育理念は、体験してみて、その行為を反省的に思考することがあってはじめて「学んでいる」と言えるとする考え方です。作業療法の理念は「人は作業を通して健康や幸福になる」

 「不登校の子どもたちは学校という枠以外での経験をするが、その経験がとても大切です。規律のある学校では得られないかもしれない経験をするからです。その経験を個人のものとしての財産にしていくことが大切です。」
(K氏)

そもそもなぜこの3つの源流があるのかを考えると、人間を阻害する社会の仕組みがあります。

 ミッシェル・フーコーの指摘にある「異常者」の発明です。
19世紀に、児童心理学、精神医学、臨床心理学、犯罪学、臨床医学などの
一連の学問が生まれます。人間の心と体に関する科学という新分野が、
科学一般の進歩の結果として発見されたのではありません。学問と、空間と、時間の区割りと活用によって作用する権力が作動する際に必要とされた「正常と異常という尺度の発明」をしました。

 こうした中で、OTは色々な問題に直面しています。

ケアを受ける身で考えることは、リハビリは治療の後の社会復帰を期待していると考えがちですが、慢性疾患の患者にとっては治ることへの期待よりも生きることへの日常を取り戻すことにあります。そうした精神的な支えをするためにどうのように寄り添うことができるのか、とても難しいことです。経験を積む重ねることしかありません。

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