生きること、学ぶこと
(問い)ICE アプローチをどう学修に活用するのか?
ICEアプローチを活用したアクティブラーニングに関して、「Students exiting things happen」を生徒と共に推進している柞磨昭孝先生(元県立安芸高等学校校長・元県立祇園北高等学校校長)とTaxonomyの開発者Dr. Sue Fostatyとの座談である。
BloomのTaxonomyの考え方とICEの位置づけ、クリティカルシンキング、発問の重要性、ICEに関する多様な解釈や活用事例、アセスメントについて、質的評価を可能にするICE ルーブリックの意味付け、何故学生(生徒)はICEによる授業で夢中になることができるのかなどの広範のテーマで意見交換した。
ICEアクティブラーニングの目的は、“Student Engagement”を推進することであることは論を待たない。“Student Engagement”は1981年米国で初めてのアクティブラーニングの著書を書いたJim Eison教授の提唱した概念である。大きな意味での学びの再定義である。具体的には学ぶ個人がそれぞれの意味を創りだすことであり、学修者が深い学びのアプローチを実践できる環境をつくりだすことである。この学びのプロセスを評価するのがICEアプローチである。従ってICEには負の評価は存在しない。全てが肯定である。ICEは直線的な学びの段階を示すものではなく、螺旋的に継続成長していく学びのフレームワークである。Bloomのように学びのステージを登っていくものではない。自覚的学修であり、教師の評価を意識しない。そもそも今の授業は教師が評価の目標をつくってしまうから、生徒はその方向を向いてしまう。個人の力量に沿った、個人としての成長という肝心なことが忘れられる。
ICEモデルの開発者の一人であるSue先生(クィーンズ大学、カナダ)の話をよく聴くと何を大切にしているかが見えてくる。
アセスメントが学びを促進するのは、アセスメントと学びは密接な関係があるためであるアセスメントモデルが学生の学びを作るので、もしアセスメントの目標、方法、選択を間違えると学びも間違える可能性が大きいということが原点にある。Bloomの方法は、学びをステージとして考えて直線的に高いレベルに登っていく。ICEではプロセスの自己評価によりどこまでも繰り返していくことで、「学習のレベルの違いを学ぶのではなく、質的変容を経験していくものである」ことに気がつく。とはいうものの、そもそもアセスメントが学びに必要なのかということがSueの疑問である。
Ideas、Connections、Extensionsというのは、知識をつなげて応用するという一連の繋がりであり、学びのプロセスとしてはより複雑な思考を行うことであるが、これは一方向ではなく回転していくものでもある。学習の段階に応じてICEのそれぞれで同じように学んでいく。Eで終わるのでなく、またIに、Cに成長していくのである。(ここがとても大切なポイントである。)
Sue先生の発見は、ICEの質的なアセスメント(量的アセスメントは、目標をどのぐらい達成したかを測るが、質的な評価は、どんな変化が生まれたかを見る)に「動詞」を使うことに思い至ったことであるが、考えれば学びとは静的なものではなくダイナミックなものであるから「動詞」という仕掛けを考えたのは理屈にもあっている。この「動詞」について考えるとさらに面白いことが分る。つながりC、に行きやすい動詞と留まっている動詞があるということがあるようである。この分析は面白い。
広島県立安芸高校の田辺先生を筆頭にした先生方が3年に亘り生徒と共になって開発した「カナダを超えるICEアプローチ(授業設計)」はICEのそれぞれのエリアに多様な意味付けを行うことで試行錯誤をしてみた。それはICEがframeworkであることを前提として考えていたからである。その結果、Super Extensionという考え方を開発した。Eから始める授業設計も開発した。I(c)という考えから数学の三角関数や対数の生徒の理解が飛躍的に高まった。生徒が深いアプローチができるようになり、学びの個人的な意味付けができるようになってきた。ICEの存在しない授業は生徒が拒否するようになってきたと言う。
今回の座談会でカナダと日本でのICEの実践の方向性が基本的に一致したことはとても嬉しいことである。今後日本とカナダが一層の連携を図りつつ学生(生徒)と教師が一緒に作り出す授業設計の発展につながることを期待したい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?