生きること、学ぶこと
なぜ裏金を作ったのか?
〜日本の政治はどこまで落ちるのか?〜
裏金作りの目的の一つが、「公職選挙法の適用がない自民党総裁選において、裏金で買収するため」という、上脇博之の指摘には驚く。「検証 政治とカネ」を読む。
党首討論で、石破首相が裏金ではない、不記載だと釈明したが、裏金は英語でsecret moneyであるから、不記載で秘密にしたわけである。従い、まさに裏金なのである。裏金には悪質性の意味があるので、裏金=悪意という図式を避けたいだけの反論である。
まず、政治資金規正法とは何か?について考える。
政治資金規正法の目的には、「国民の不断な監視と批判の下に行われるようにするために------資金の授受を規正する。」とある。
つまり、国民が政治家を監視するための法律である。
その規正は2つある。
1)資金を使えるのは、政治団体に限定すること。
2)政治資金のやりとりを直接制限すること。
成立は1948年であり、1954年「造船疑獄」、1966年「黒い霧」、1975年「田中金脈」、1988年「リクルート」、1992年「佐川急便」などの「政治とカネ」事件の度に改訂が議論、あるいは一部改訂されてきたが、ザル法という実態は何も変わっていない。
55年体制の崩壊、細川、村山政権の時が、企業献金の全面禁止の絶好の機会であったが中途半端に終わってしまう。むしろ政党助成金(政党交付金)の上限枠の規定の撤廃までしてしまい、さらに悪くなる。今日自民党が160億円ものカネを税金から得ているのもここにある。
政党助成法による政党交付金は、国民一人250円として、総人口をかけた費用を税金から出す。「コーヒーいっぱいできれいな政治」という謳い文句で。企業献金をそのままにしてさらに大きな税金を投入した。あの金丸ですら、「泥棒に追い銭」になると反対した。共産党以外は全ての党が受け取っているカネである。ドイツでは違憲判決がでている。
裏金はこうしてつくられる。
一つは企業等へのパーティー券の購入である。パーティー券はいくらでも購入できる。清和政策研究所、志師会などの政治団体は、「その他の政治団体」という枠で、きわめて緩やかな基準となる。しかも利益率は80%位以上という異常な高さである。2022年の清和は、1億9762円、志師会は、2億4652円であった。
パーティーが、政治資金規正法の透明化を阻害する要因である理由は、本来1年間に5万円を超える寄付は氏名などを記載する必要があるが、パーティーは20万円を超えなければ購入者の名前が出ないようにできる。パーティーの購入は形を変えた賄賂であることは誰もが承知している。
もう一つは、今回の選挙の争点となる「政党から政治家個人への裏金」」である。
政治資金規正法の対象は政治団体である。ここで極めて重要なことが書かれている。何人も公職の候補者への寄付はできない。ただし、政党の寄付は適用されないのである。
驚きの第2項である。
(会社等の寄附の制限)
第二十一条会社、労働組合(労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第二条に規定する労働組合をいう。第三項並びに第二十一条の三第一項及び第二項において同じ。)、職員団体(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百八条の二又は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第五十二条に規定する職員団体をいう。第三項並びに第二十一条の三第一項及び第二項において同じ。)その他の団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない。
2前項の規定は、政治団体がする寄附については、適用しない。
この30年間でなぜこれほどまでに政治は悪くなったのか?
自民党の腐敗は、小選挙区制度にあると上脇は指摘する。
そもそも、自由党と日本民主党が一緒になりできた時は、政治家を目指す個人が政権党の中でリーダーシップを発揮するために派閥も作るが非主流も、反主流も存在した。中選挙区制度では、派閥間の代理戦争ではあったが、党内の政策の多様性が存在していた。これが小選挙区に変わり、イエスマンばかりになる。小泉チルドレン、安倍派一辺倒の初任議員たちである。
小選挙区のもう一つの問題は、死票が多いことである。2013年の第2次安倍総裁の時は自民党の得票率は43%なのに、 議席は79%を得た。
これは議会民主主義の危機である。投票の声が正しく反映されなくなっている。そもそも議会にはバランスよく政党が配分されなければ権力政党が多数決でなんでもできてしまう。
裏金を指摘された後で、「単純ミス」の修正がなぜゆるされるのか?
政治倫理審査会で、「知らなかった」と弁明する。平気で嘘をつく議員。裏金で一番悪いのは、雲隠れしている議員。その次によく見るのは、法令に則って適正に処理しています、という開き直り.単純なミスなので訂正しますという。政治家以外では許されないこの行為を私たちは、なぜ許してしまうのか。
安倍パーティの接待疑惑では、ホテルから見積書出ていた。不足分は、安倍の資金管理団体、晋和会からの払われたことが明確になった。後援会への寄付にあたるが記載なし。安倍派体調不良で総裁辞任したが、「桜を見る会を追求する法律家の会」が結成され、2018年の政治資金規正法と、公職選挙法違反の寄付行為の罪で東京地裁に告訴していた。2020年の告訴により捜査の手が迫っていることを感じていたのではないか?
「国民の知る権利」を侵していることに加えて、国民全体ではなく、一部の企業との癒着を放任していることなど、民主主義が根本的に歪められているという認識が検察に欠けている。
安倍政権の時の検察との癒着も疑われる。黒川東京高検検事の時の佐川元理財局長の不起訴事件の流れからの検察庁法改正案を提出した。
私たちは政治家のカネをどう監視するか?
政治資金収支報告書は、総務省と都道府県選挙管理委員会からインターネットで公開している。政党交付金使途報告書は総務省から公開しているが閲覧のみである。選挙運動費用収支報告者は公開なし。
公益財団法人「政治資金センター」では政治資金の情報にアクセスできる。https://www.openpolitics.or.jp/
政治家にカネ中毒を糺す道は?
真の政治改革とは、収入源を断つことしかない。資金中毒の議員にカネを与えないことである。議員には歳費、立法事務費、調査広報滞在費、秘書費などで、なんと7ー8000万円も払われている。この費用の範囲で十分な活動ができる。
カネを断つのは
・政党交付金の廃止
・献金の抜け道のパーティーの禁止
「政党の政治資金は、個人献金と党費によって賄われることが本来の姿である。」と第五次選挙制度審議会は指摘していた。
さらに、合法的裏金も失くさなければならない、
・政策活動費として、10-20億円が幹事長からの寄付されている。使途不明金である。
・調査研究広報滞在費も使途報告制度がない。
・立法事務費も同じ。この二つは統合して、院内会派に交付した厳しい変わりをすべき。
・内閣官房報償費は会計監査院もわからない、官房機密費と呼ばれる.自民党の政治資金のように使われている。
今回の衆議院選挙は、国民の怒りがどれだけあるかを問われる選挙であることは間違いない。