続 岳物語
いつも鞄の中に入れておいて、なんとなく気が向いたら少し読む。
そんな読み方にとても適している、『続 岳物語』
そんな読み方をしていたから、随分長く一緒にいて、随分ゆっくりと読了した。
『岳物語』との出会いは、小学生の頃の国語の文章題だったんだけれど、『岳物語』は本質的には、そんな「コクゴノモンダイ」なんかに取り上げられるようなタマじゃないと気付く。
正直そんな、慌てて字面だけ、表面だけすくうような読み方で味わえる作品じゃない。
カナディアンカヌーってどんなだろう。
川を下るわくわく、ドキドキ。そしてハラハラ。
親子の取っ組み合いの迫力。
犬のガクの切ない鳴き声。
ひとつひとつ、言葉から息づかいや、情景や、感情を浮かび上がらせていって、ゆっくり味わう、そんな読み方が似合う作品だった。
岳の母であり、シーナさんの妻が言う、「風同士」という言葉がとても好き。
岳と野田さんというのは風同士のようなものなんだと思うわ。一緒にキャンプしながら何日間も川を下っていても風同士だからお互いにまったく気にならずにいられるのね。(88頁)
あと、野田さんの「自由の代償」という言葉もいいな。
いまの世の中は犬にも人間にも“自由の代償”っていうのはやたらに重くなっているわけなんですね、きっと(112頁)
35年以上前の本だけれど、古さを感じさせなくて、むしろSDGsな世界の必読書なんじゃないかって思える一冊。
生きることは「自分のことは自分でやること」であり、川をくだるように、時に逆らわずにいることであることを思い出させてくれる。
純粋に、シーナさんや野田さんのフリーな生き方に励まされる。人はもっとずっと自由でいいんだって。
心くらいは自由でありたい。
ロン204.