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ようこそ特売ブロッコリー


スーパーの入り口すぐに、ブロッコリーが売られていた。

特売!98円!

ブロッコリーの相場は分からなかったし、少し小ぶりな気がしたけれど、ちょうどブロッコリーが欲しかったのでかごに入れた。


少し進むと、普段の野菜売り場にもブロッコリーが売っていた。


産地も同じで、なんと98円。

見ると、こちらの方が瑞々しく、大ぶりだった。


ふむ。なるほど。


まんまとスーパーの戦略に乗せられてしまったらしい。


カゴの中のブロッコリーを取り出して、目の前のブロッコリーと比べてみた。

やっぱりちょっと小さい。
なんとなく、しおれても見える。


ちら、と後ろを振り返る。


ほんの数メートル、もとの売り場に戻ってこのブロッコリーを戻してしまおうか。


もう一度、カゴの中の少ししょげたようなブロッコリーに目をやる。


うーん。


君、君に出会ったんだもんね、今日は。


入り口で出迎えてくれた、君を見つけた時、私は確かに君を買うと決めた。


だから今日はしょげた君を買って帰ろう。



私は一度結んだ縁を大切にしてしまう生き物だ。


きっと、きちんとこの無慈悲な資本主義社会で勝ち抜いていく人たちは、コスパのよい正解を選ぶのだろう。

都合の合わない誰かや何かを切り捨てるなんてお手のものだ。


けれど、比較されて、こっちの方がよりよい、と振り落とされていくモノたちに、ついつい自分を重ねてしまう。


私はいつだってモタモタしている売れ残りだ。


少し小さいくらいが、ディンクスの私たち夫婦にはちょうどいい。


軽く頷いて、次の売り場へ。



ようこそ、しょげたブロッコリー。

君はきっと、私たち夫婦の素敵な栄養になってくれる。


世界一あたたかい我が家に迎え入れて
私はとても満足した。





ロン204.

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