単項イデアル〈龍孫江の環論道具箱〉
前回は準同型の核の持つ性質を抽出してイデアルを定義しました.当面の目標は「イデアルこそが準同型の核となりうる部分集合である」,すなわち
ある環準同型$${A \to B}$$の核はイデアルである
$${A}$$の総てのイデアルはある準同型$${A \to B}$$の核として表せる
を示すことです.準同型の核がイデアルであることは定義からも明白ですから,下の主張が当面の課題です.
この課題に取り組む前に,特徴的なイデアルの観察から始めましょう.
定義(単項イデアル)
$${A}$$を環とする.$${a \in A}$$から定まる集合$${ \{ax \mid x \in A \} }$$は$${A}$$のイデアルとなる.この形のイデアルを$${A}$$の単項イデアルといい,$${a}$$をその生成元という.
ここから先は
1,142字
環論の初歩について,基本事項をまとめます.教科書にはあまり書かれない細々とした計算や寄り道っぽい話なども多く取り入れようと思います.購読月中は過去記事をすべて読むことができますので,必要なときだけご購読いただいてもOKです!
龍孫江の環論道具箱
¥400 / 月
初月無料
環論の初歩について,基本事項をまとめます.環論を学び始めた人,もう少し良く知りたい人におすすめです.月6回ほどの更新と,おまけテキストを載…
龍孫江の群論・環論道具箱
¥700 / 月
初月無料
龍孫江の群論道具箱・環論道具箱の記事を同時に読める合冊版です.それぞれ購読するよりはお得な価格設定となっております!龍孫江へのご支援を兼ね…
Twitter数学系bot「可換環論bot」中の人。こちらでは数学テキスト集『数学日誌in note』と雑記帳『畏れながら申し上げます』の2本立てです。