環の準同型写像〈龍孫江の環論道具箱〉
前回は環の直積を定義し,直積集合$${ \mathbb{Z} \times \mathbb{Q} }$$には2通りの環構造(加法・乗法)が定まることを見ました.器となっている集合は同じですが,そこに定義されている演算は異なるものです.では,この「2通りの環」は "同じもの” なのか? というのが問題です.
https://www.youtube.com/watch?v=Q8UNXEf_qBY
これをきちんと解決するには「2通りの環が同じものであるとはどういうことか?」を定式化しなければなりません.特に,2つの環を比較する方法が必要です.そのために重要なのが準同型写像の概念です.
定義(環の準同型写像)
$${A, B}$$を環とする.写像$${ f \colon A \to B}$$が加法,乗法および乗法単位元を保つ,すなわち
任意の$${a,b \in A}$$に対し$${f(a+b) = f(a) + f(b)}$$
任意の$${a,b \in A}$$に対し$${f(ab) = f(a) f(b)}$$
$${f(1_A) = 1_B}$$
をみたすとき,準同型写像という.
ここから先は
706字
環論の初歩について,基本事項をまとめます.教科書にはあまり書かれない細々とした計算や寄り道っぽい話なども多く取り入れようと思います.購読月中は過去記事をすべて読むことができますので,必要なときだけご購読いただいてもOKです!
龍孫江の環論道具箱
¥400 / 月
初月無料
環論の初歩について,基本事項をまとめます.環論を学び始めた人,もう少し良く知りたい人におすすめです.月6回ほどの更新と,おまけテキストを載…
龍孫江の群論・環論道具箱
¥700 / 月
初月無料
龍孫江の群論道具箱・環論道具箱の記事を同時に読める合冊版です.それぞれ購読するよりはお得な価格設定となっております!龍孫江へのご支援を兼ね…
Twitter数学系bot「可換環論bot」中の人。こちらでは数学テキスト集『数学日誌in note』と雑記帳『畏れながら申し上げます』の2本立てです。