Prime Avoidance〈龍孫江の環論道具箱〉

　単元群の要素を「どの極大イデアルにも含まれない」と特徴づけましたが，可換環の観察においては，このように指定した素イデアルに含まれない要素をとれると嬉しいことがしばしばあります．そのような操作を保証してくれるのが今回紹介する Prime Avoidance（素イデアル避け）です．

https://youtu.be/IT4UZFehdHs

定理（Prime Avoidance／素イデアル回避補題）

環$${A}$$の素イデアル$${P_1, \ldots, P_n}$$およびイデアル$${I}$$に対し，すべての$${t}$$について$${I \not\subset P_t}$$ならば$${ I \not\subset \bigcup P_t}$$である．□

　この定理の結論「$${I\not\subset \bigcup P_t}$$」は「$${I}$$の要素でどの$${P_t}$$にも含まれない（避ける）ものが存在する」と読み替えられます．Avoidance（回避）の語はこの様子を指し示しています．