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可換環の確認〈龍孫江の環論道具箱〉
以前,可換環の源流となった数の体系と函数の体系の2種類から例を挙げました.今回は,もう少し複雑な集合にもう少し複雑な演算を導入して,可換環の例を与えてみます.
例1.集合$${A = \{ (a,x) \mid a \in \mathbb{Z}, x \in \mathbb{Q}\}}$$は,次の演算にとり可換環をなす:
加法 $${(a,x) + (b,y) := (a+b, x+y)}$$
乗法 $${(a,x) \cdot (b,y) := (ab, ay+bx)}$$
この等式$${(a,x) + (b,y) := (a+b, x+y)}$$や$${(a,x) \cdot (b,y) := (ab, ay+bx)}$$において,左辺と右辺の記号$${+}$$や$${\cdot}$$は意味が異なります.左辺におけるこれらの演算子記号は$${A}$$における演算結果を意味しています.一方,右辺の成分に現れる演算子はそれぞれ$${\mathbb{Z}}$$や$${\mathbb{Q}}$$の演算結果を表し,右辺の結果をもって左辺の和や積の値だと「定める」等式といえます.
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