イデアル〈龍孫江の環論道具箱〉
準同型を用いて環を比較するとき,単射とどれくらい離れているかを示す尺度として準同型の核を導入しました.このように興味深い部分集合が与えられたとき,では「どのような部分集合ならば準同型の核となれるのか?」という問題が自然に励起されます.しばらくはこの疑問にこたえるべく考えていきたいと思います.
このような「○○なるものは何か?」という問いに対して,大きく2つのアプローチがあります.
必要条件(〇〇から導かれる条件)を考える
充分条件(〇〇を導く条件)を考える
です.まずは自明な場合(とても良い場合に〇〇が成り立つことを確かめる,〇〇から簡単な性質を導出する)から始めて,少しずつ解像度を高めていくのがよいでしょう.
命題(準同型の核がもつ性質)
環準同型$${f \colon A \to B}$$の核$${\ker f}$$は次をみたす.
$${0 \in \ker f}$$,特に$${\ker f \ne \varnothing}$$.
$${x, y \in \ker f}$$ならば$${x+y \in \ker f}$$.
$${x \in \ker f, a \in A}$$ならば$${ax \in \ker f}$$.
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675字
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