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避けきれないイデアル〈龍孫江の環論道具箱〉

 2回かけて素イデアル避けを紹介してきました.とりわけ素イデアルでないイデアルを含む場合の主張は,なんとも「これどうなってるんだ?」と感じさせる部分があります.

定理(Prime Avoidance改・再掲)

$${P_1, \ldots, P_n}$$は高々2個を除き素であるイデアルとする.$${I}$$をイデアルとするとき,各$${t}$$に対し$${I \not\subset P_t}$$ならば$${I \not\subset \bigcup P_t}$$である.□

 この「高々2個を除き素」という条件について,「素でないイデアルを含む場合はほとんど使ったことがないはず」と述べたところ,膝を打つようなご指摘を頂きました.(素イデアル避けを使っている意識もなかったのです)

さて,本題に進みましょう.今回の話題は,素イデアル避けにおいて「3個以上素でないイデアルの族は避けきれるか?」です.これについては,次の例が存在します.

例(避けきれない素イデアル)

$${A = \mathbb{F}_2[X,Y]/(X,Y)^2}$$のイデアル

$${ P_1 = (X)}$$,$${P_2 = (Y)}$$,$${P_3 = (X+Y)}$$
および$${M = (X,Y)}$$

とおくとき,各$${t}$$に対し$${M \not\subset P_t}$$だが$${M = P_1 \cup P_2 \cup P_3}$$である.□

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