第3話 日本もギリシャのように財政破綻するのか?
ここで財政健全化の歴史を辿る前に、財政健全化が実現できなかった場合の最悪のシナリオの一つとしてよく上げられる、2010年に起こったギリシャの財政破綻のケースを見てみたい。
ギリシャの財政破綻の発端は、日本でもリーマンショックとして知られる世界金融危機である。なので、この事象が起こった発端は世界的な金融危機であり、ギリシャの財政赤字だけが原因でないことは理解しておく必要がある。
そして、この件で重要なのは2010年にギリシャが金融支援を要請し、緊縮財政政策が実施されてから、加速度的にギリシャの失業率と実質GDPが悪化していることである。財政赤字が国民の生活を破壊したのではなく、財政赤字に対応するための緊縮財政が国民の生活を破壊している。
また、ギリシャと日本の大きな違いが「ギリシャには通貨発行権がない」ということである。ギリシャはEU加盟国であり、通貨発行権を欧州中央銀行に握られているため、自国の都合で財政出動を行うことが出来ない。ギリシャはEUの支援を受けるため(EUにとどまるため)に国民を塗炭の苦しみに投げ込んだのであり、これはこれで悲劇なのだが、日本の財政赤字の結果起こる最悪のシナリオの一つとして考えるのは無理がある。
ギリシャのシナリオは、むしろ財政健全化を目指すと起こり得る最悪のシナリオだろう。プライマリーバランスの黒字化という財務省の目標は国民生活破壊の悪夢の目標なのだ。