最近読んで面白かった本のレビュー 『武田信玄』『教団X』『杉原爽香シリーズ』『孤独の価値』
武田信玄 風の巻
始めて長編を読んだのは、この新田次郎さんの『武田信玄』全4巻だったか。司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』全8巻だったか。
はっきりと覚えていない。
読んだのは高校生の時。それははっきりと覚えている。
両方とも夢中で読んだ。それもはっきりと覚えている。
小説の面白さを十分に知った。それ以降ずっと本を読み続けている。人生に影響も受けたことは間違いない。
生涯最高の一冊であることは間違いない。
『竜馬がゆく』はそれ以降も何度も読み返している。しかし、この『武田信玄』は、読み返していない。
なぜだろう。
今、読み返したくなったのは何か意味があるのだろう。と思う。
高校生以来の再読をして、思い出したことがある。
淡路島の実家の自分の部屋で四巻を読み終えたんだけど、雪なんかほとんど降らない地域なんだけど、窓の外に雪が降っているように感じ、四巻を読んでいる途中からずっとシトシトと雪が降っている音を聴きながら読んだことを覚えている。
実際読み終わり窓を開けると雪は降っていなかったけど、確かに今、僕は雪を感じていた。信玄公の遺体を甲斐国に運ぶミシミシと地面を踏みしめる足音を実際に感じた。
天下を取れなかった信玄公と武田家臣団の無念に共感した。
どっぷりと本の世界に入り込んだ最高の読書体験をしたことを覚えている。それ以降ずっと信玄好きです。
この風の巻は、青年信玄の成長期の物語。
父親の放逐に大敗北した砥石崩れ、勝頼の母、湖衣姫との出会い。そして、生涯のライバル長尾景虎、上杉謙信も最後に登場する。盛りだくさん。
30数年ぶりの再読もやはり最高。
しかし、武田信玄全4巻と竜馬がゆく全8巻を読んでいる間僕はまともに学校に行っていたんだろうか。そっちの記憶があまりない(汗)
教団X 再読の衝撃
最読本。
単行本が出た時に話題になっていた時に読んで以来の再読。
衝撃でした。
再読の場合、再読でも面白いっていうのが感想になるんでしょうけど、この作品は、再読でも衝撃でした。
性の快楽の先にあるもの。性の快楽に溺れにおぼれてもう自力で這い上がれないほどの溺れきったならば、その先には何があるのだろう。
性の快楽に溺れさせ、自我を崩壊させ、その人を自由自在に操る。
テロを行う危険な宗教団体の実態。
それと、科学的な側面から人間とは何かを文学で説明する。再読でも読み応えがある。
政治批判、世界を覆う普通が間違いであること。
そして、最後のメッセージ。
しかし、それは以外にも普通に生きることだったりする。
【生命と性と暴力と知性と優しさと善と悪と社会と落ちこぼれ】
人間ってなんだ。
神ってなんだ。
この社会は生きるに値する社会なのか。
この僕という存在は生きるに値する命なのか。
この問を自分に問いかける。そんな機会になる本です。
向日葵色のフリーウェイ 杉原爽香50歳の夏
赤川次郎さんのシリーズもの。
このシリーズが始まった時は主人公が15歳。
それから、毎年一冊づつ新作が出ているので、もう35年ですね。長いなぁ。
しかし、最近では、話の内容よりも一年たつごとに登場人物たちがどんな一年を過ごしてきたのか、その近況報告が気になっていたりします。
孤独の価値 森博嗣さん
孤独は一人ぽっちではない。
貧しくもない。
もちろん経済的にも精神的にも。
それに寂しくもない。
一人で生きていける。
創作もできるし。
読んでいて感じたのは、孤独は贅沢な時間だと言うこと。精神的にも自立し、誰にも依存していないし、寄りかかっていない。僕も一人が好き。そんな人には一読の価値ありです。読書好きは基本一人が好きなんじゃないかな。読書好きは読書好きな人でないと友達になれないのかな。