
[西洋の古い物語]『ニャールのサガ』より、「グンナルの死」(第2回)
こんにちは。いつもお読みくださりありがとうございます。
アイスランドの古いサガより、グンナルの死の物語の第2回目です。
英雄グンナルと賢者ニャールは無二の親友同士です。しかし、二人の願いに反して、それぞれの妻たちの喧嘩から始まった、血で血を洗う報復の連鎖が止まりません。
ご一緒にお読みくださいましたら嬉しいです。
※フォトギャラリーを拝見していましたら、ちょっと退屈そうなお顔の可愛いワンちゃんと目が合ってしまいました!このソファはワンちゃん専用なのでしょうか。とっても居心地良さそうですね!私もこんなふうに暮らしたいです!
「グンナルの死」(第2回)
さて、ハルゲルヅはコルにスヴァルトを殺させ、彼女の夫とニャールの間にもめ事をもたらしました。彼女は直ちに使者をやって全島民会にいるグンナルを探させ、スヴァルトに起ったことを告げさせました。グンナルは使者の話を黙って聞いていました。それから彼は召使たちをそばに呼び寄せました。そして、皆でニャールの天幕へ行き、出てきてグンナルと話してほしいと頼みました。
ニャールが彼のところにやってくると、「あなたの家僕のスヴァルトがハルゲルヅと彼女の召使のコルに殺されました」とグンナルは重々しく言い、自分が使者から聞いた通りを話しました。
「賠償のことはあなたが決めて下さい、ニャール」と最後に彼は言いました。
「ハルゲルヅの悪事の全てを賠償するために、あなたはたいへんな思いをするでしょうね」とニャールは答えました。
「私たちの昔からの友情に免じて、今は争わないでいましょう。私が思うに、最後にはあなたは切り抜けるでしょう。でも、困難な戦いの後にね。賠償については、あなたは私の友人ですし、この件には無関係なのですから、銀12オンスで決着をつけましょう。そして、もしあなたが裁定額を定める番になっても、私はそれ以上お支払いしませんよ。」
そこでグンナルは金を並べ、それをニャールの妻ベルグソーラに渡しました。そして彼は息子たちと一緒に全島民会から家に戻りました。ベルグソーラは満足でしたが、いつかコルの賠償をするのに間に合うだろうから、このお金は使ってしまってはいけませんわ、と夫に言いました。
ハルゲルヅは夫に堂々と会い、怯むことなく彼に応じましたが、彼が、どんなもめ事でも始めるのは勝手だが、それを収めるのは常に彼の役回りであることを忘れるな、と彼女に告げたとき、その厳しい顔と鋭い言葉に彼女は内心は少し震えていたのでした。しかし、彼女は気に掛けていないふりをし、いつものように近所の人々と一緒に外へ出て、聞きたい者には誰にでも、スヴァルト殺しの話を語って聞かせました。とうとうこのことがベルグソーラの耳に届き、彼女はひどく腹を立てましたが、黙って耐え忍びました。
ニャールと息子たちが牛の様子を見に牧場へ上がっていき、召使たちは畑で忙しく働いておりました。この日、女主人のベルグソーラが家に一人残っておりますと、黒い馬に跨がり槍と短い剣で武装した一人の男がドアのところへやってきて、何か仕事はありませんかと彼女に尋ねました。彼は、自分はいろいろな事に熟練しているのだが、気性が粗く、それが身の災いのもとなのだ、と言いました。
「あなたに仕事をあげましょう」とベルグソーラは答えました。
「でも、私が命じることを何でもしなくてはいけませんよ。たとえそれが人殺しであってもね。」
「そういう用件ならもっと頼りになる男が他に大勢いるでしょうに」と男は答えました。あたかもこの取引を後悔しているようでした。しかしベルグソーラはただ、自分の召使には命じられた通りにすることを期待している、とだけ述べ、馬をつなぎに男を厩へ行かせました。
その夏には全島民会がもう一度開催され、ニャールと息子たちは出かけました。グンナルも同様でした。しかし、ベルグソーラは召使たちと家に残っておりました。そこで彼女は、あの新参者のアトリを呼び、コルを見つけ出して殺すよう命じました。アトリは自分の馬と剣と槍を用意して出発しました。
彼は、何人かが教えてくれた場所でコルを見つけました。彼はコルに礼儀正しく話しかけましたが、無礼な調子の答が返ってきただけでした。そこで、もうそれ以上面倒なことはせず、アトリは彼に斬りかかり、コルは、負傷しながらも斧を頭の上で振り回しました。しかし目がかすんできて狙いが定まらず、そのまま地面に倒れ、息絶えて転がりました。
アトリはその場に亡骸を残し、グンナルの召使たちのところへ馬で行って、コルが死んだとハルゲルヅに告げに行くよう言いました。
「お前が彼を殺したのか」と召使の男が尋ねました。
「ふん、奴が我と我が身を打ち殺すとはハルゲルヅも思わないだろうよ。」とアトリは答えました。そして彼は、ベルグソーラのところへ戻りました。彼女は、彼が彼女の命令を迅速に実行したことで彼を褒めました。しかし、アトリは満足していない様子で、しまいにこう言いました。
「ニャールはどう思いますかね。」
「あら、あの人のことは怖がらなくていいのよ」とベルグソーラは答えました。「だって、あの人はスヴァルト殺しの賠償金を民会に持って行ったのですもの。だからコルの分としてそれを支払えるわけよ。でも、賠償ができてもハルゲルヅには注意なさい。彼女は約束とは何たるかを全く知らない人だからね。」
コルが殺されたことを聞くと、ハルゲルヅは使者に命じて民会にいるグンナルのところへ馬で行かせました。グンナルはニャールとその息子スカルプヘジンを探すよう人をやりました。彼らがグンナルの天幕へとやってきましたので、グンナルは彼らに挨拶しました。ニャールは、妻のベルグソーラが調停を破って大きな過ちを犯したことを告げ、今やグンナルが殺されたコルのための裁定額を決めなければならない、と言いました。
「私がスヴァルトのために支払ったのと同額にしましょう」とグンナルは言いました。ニャールはその金を払い、彼らは別れました。二人の間には
全く悪感情はありませんでしたが、彼らの妻たちはあいかわらず互いへの敵意を固めておりました。
ニャールは賢明な男でしたから、コルの殺害のことでハルゲルヅがアトリに復讐したいと望んでいることを承知していました。そこで彼はアトリに、ハルゲルヅの手が届かないよう、遠く東の方へ行って仕事をしてほしい、と頼みました。しかしアトリはニャールに、他の主人に仕えてのんびり生きるより、彼に仕えて殺されたほうがましだ、その際にもしニャールが自由民にふさわしい賠償を自分のためにしてくれるのなら、今いるところに喜んでとどまりたい、と言いました。
ニャールはこの願いを聞き入れ、アトリは彼の家にとどまりました。
(次回に続きます)
「グンナルの死」(第2回)はここまでです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
次回をどうぞお楽しみに!
「グンナルの死」(第1回)はこちらからどうぞ。
この物語の原文は以下に収録されています。
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