日常
写真の端に刻まれた文字
透かして消えるオレンジの時間
仰向きの午後
いつまでも同じところは空いたまま
きょうだけ思い出していい
きょうだけ思い出してほしい
横たわった私の皮や肉を掻き分けるあなたの指先から爪
遠くなっていく声をつなぎとめようと耳を澄ましてたら
知らない世界にきてしまった
車窓からすぎてゆく思い出を眺め、
離れないようにと見慣れた景色を吸いこみ風に髪を送った
ガラス窓の向こう、空を辿ったらブルーとグレーが混ざりあう
行ってしまった世界でも 帰ってきた場所でもぼんやり眺める景色からは同じような音が見える
私はしっかり私の体におさまったままだったな
こうしてなんとなく毎日を過ごしていくのかと、
遠くを眺めて向こうのひかりに指差し合図したら
雲間から陽が射して
グレーが破れて溶けて 青空が広がった