【どこかで見た風景】キュビズム展 美の革命 パリ・ポンピドゥー・センター 国立西洋美術館
今回はキュビズムにフォーカスしたポンピドゥーセンター所蔵品の来日。
日本では1970年代以来のキュビズム・フォーカス企画だそうだ。
この様にフランスのポンピドゥーやらオルセー、ルーブルなどは本当にありがたい事に1,2年に数回、国内で見れるチャンスがある。
コロナ禍で延期続きになった事を思い出すと、本当にありがたいことだ。
おかげで、今まであまり理解できてなかったヨーロッパの近代絵画史の流れは見る度にザックリと掴める。
キャプションの「おや?」
作家名の下に大体、生年没年が記載されていると思うが、今回はそれに対して出生地名と死没地名が記載されている。
記載の地名は国名ではなく地域名なので「パリ」などの記載は流石にわかるけれどちょっと難しい地域の名前だと全くイメージが掴めなかった。
アルジャントゥイユ、ってどの辺…?フランスでいいのか?となった。
展示構成、作品について
構成
フランスのポンピドゥーセンターの所蔵品を中心にキュビズムの流れを魅せる展覧会である。
日本国内の美術館からの貸出品もあり。場内撮影禁止作品に関しては国内美術館貸出品がほとんど。
ポンピドゥーセンターからやってきた作品はほぼ撮影可能だった。
前哨段階のセザンヌから始まりピカソとブラックその流れはレジェ、ドローネ。
さて辿り着く先はデュシャン→国境超えてロシア方面へ…といった流れが掴める展示構成。
時系列別展示構成なのは分かりやすい反面新鮮さはない。この手のブロックバスター展の、上野でやる展覧会の、スタンダード、である。
作品について
ブラックのこの裸婦の既視感。
萬鉄五郎に似たのありましたね。こういうところに影響受けていたのかなぁ。
現在、東京国立近代美術館のコレクション展示室にキュビズム関連なのか展示されているので、合わせて見ることができるとすごい楽しめそうだ。
この他館便乗展示は「あ!これアレの…!」とつながると物凄く面白い。
上野周辺や新国立に来ている海外大型美術館企画展が行われている時、近しい所蔵を持っている美術館をチェックするのはおすすめだ。
アーティゾン、東京国立近代はコレクション展でそれとなく関連作品が出ていることが多い。
デュシャン、三兄弟
デュシャン、三兄弟でそれぞれ芸術家だったのかー。
マルセル・デュシャンというとシュールレアリズム、ダダイズムから現代美術の誕生として語られることが多いが、そこの手前、キュビズムの話に名前が出て来たことに「なるほど」と。点でしか無かった情報が線で繋がった様な気がした。
そして兄、レイモン・デュシャン=ヴィヨンの彫刻、「座る女」がポンピドーから来ている。
これが本当に面白い形だ。
確かにキュビズム立体化するとこうなるのか。
ブロックが積み重ねられている、というわけではなくなめらかに形成され分断する線なく次の面へ流れていく。
しかし正面の見た目に対して側面の見た目がまた全然違うが線なのだが、一つの立体としてまとまっている。不思議。
何となく「トポロジー」という言葉が頭に浮かんできた。
既視感と過去のポンピドゥー展を想う
このデュシャン兄弟登場の章辺りから、「あれ?なんか見たことある気がする?」という作品が現れてくる。
シャガールの絵もそうだし、さっきの座る女も何処かで見た気がする。ブロンズ象だからだろうか?複数あってどこかで見たか?
しかしこのモディリアーニで既視感が確信に変わる。
これ!!!
26年前のポンピドー美術館展で見たやつだ!!!
これなんか覚えてるぞ!
東京都現代美術館の地下階展示室で見た気がする。
私のモディリアーニ初対面はこの子だ。
(そして若干の棟方志功み)
春先のマティス展ではポンピドーから来るマティス作品に以前見たものと再会できるのではないかと予め期待していた。
今回は全く意識をしないで行ったらとんでもない同窓会状態だった。
26年前、1997年のポンピドー展は本家が開館20周年を迎えた時期であり1回目の改修工事に入るタイミング。そこで所蔵品が海外へ初出張となった時の来日だった。
今回も改修工事中の出来事であり、状況が似てたわけだ。
特設サイトには140点の作品中、日本初来日は50点であると記載があった。
という事は90点が過去来日したことがある作品。
過去、大々的にポンピドゥー美術館展が都内で行われたのは2回。
1997年 東京都現代美術館 ポンピドー・コレクション展
2016年 東京都美術館 ポンピドゥー・センター傑作展↓
https://www.tobikan.jp/exhibition/h28_pompidou.html
2016年の作品リストはwebアーカイブがあったので、今回の作品リストと照らし合わせをしたら内容があまり被っていない事が判明。
https://www.tobikan.jp/media/pdf/20160825_pompidou_worklist.pdf
展示数は70点ってちょっと少ない?都美術館の広さだとこれが限界か、と思ったらそもそもこの展覧会は1906年から1977年代まで1年1枚代表作を展示するという内容だから70年分=70点だった様子。
なので今回のキュビズムリストとは少し毛色が違う。
ということで1997年の展覧会は今回の来日作品と被る部分が多い=展示の切り口も似た切り口の部分も多かったのかもしれない。
ただ97年は出品数が多かった&年代別展示でもあった。絵画の大きな流れを見せる部分としてキュビズムのコーナーがありその展示品と今回2023年キュビズム展の内容が近い部分もあったのかもしれない。
1997年の作品リストはwebアーカイブもないのでこの図録↓を大事にしようと思う。
こうなって来ると、どうしても1997年に見て子供ながらに深い感銘を受けたピカソのアルルカンをもう一度見たいという気持ちが湧いて来た。
チャンスはあるかもしれない。
希望を持とう。
そんな気持ちを胸に吸い込みキュビズム展を後にした金曜日の20時。
【余談】同時代、他地域の作家を想う
キュビズムなど近代フランス周辺の美術に対してアメリカの近代「絵画」史が頭に入っていない。
ウォーホォルやホックニー、ジャスパー・ジョーンズ等、世界のアートシーンがパリからニューヨークに移った60年代からはわかるのだ。
それ以前の所謂ファインアート、ペインティングの時系列が謎なままだった。
例えば「エドワード・ホッパーって…いつの人?」となっていた。
イメージ的にだいぶ、ウォーホォルに近いところに居るのだと思っていたら彼こそピカソ、ブラックとほぼ同じ年齢(1882年生まれ)であり、対岸のアメリカで絵画を描いていたアーティストだった。
ホッパー自身はキュビズムが隆盛した頃にヨーロッパへ行っているのだが一人で学び続けていたためか、「ピカソの名は知らなかった」という発言が印象深い。リアリズムへ進む画家とキュビズムの興味関心の方向性の対比を感じる。
あと忘れてはいけない、ジョージア・オキーフ(1887-1986)も同時代のアメリカの画家だ。こちらはリアリズムよりアブストラクションへ進んだ人でまたホッパーとも違う。
ホッパーが画家として認められ始め「日曜日の朝」を描き、オキーフが花を描き始めたのが1930年代。その前段階の時代の1910年〜1920年代のアートシーンとは。そんな事を頭の片隅に入れながら今回のキュビズム展を巡っていた。