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【座ることへの憧れ】ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム  パナソニック汐留美術館

美術館というには広さが無いけれど、ここ最近集客できているパナソニック汐留美術館。

ルオーのコレクションを持っていて、なんとか見せたい!という気概を感じる。現に今回はケアホルムデザインの椅子に腰掛けながらコレクションのルオーを見せる!という取り組みをしていた。

ルオー・コレクションを展示している当館のルオー・ギャラリーでは、本展出品作品の現行品(椅子)に実際に座って体験していただけるコーナーを設けます。絵画鑑賞と椅子体験が有機的に連関した展示空間をお楽しみいただきます。

パナソニック汐留美術館

若干の無理がある気もするけれど…デンマークのケアホルムとフランスのルオー、時代も土地も違うしなぁ。
関連があれば良いというものでもないし、コレクション作品を活かそうというのは良い取り組みなのかなと思う。

こんな感じでルオーの小部屋に並ぶ椅子は
全部、座る事ができる。

ケアホルムの椅子達。

弧を描く椅子。PK12といったかな、この椅子は眺めてて飽きないなぁと思った。構造とそのものを形作る線を目で追ってしまう。
そして椅子の脚は3本。

ルオーの前に置かれた状態。
pk12ではないけどこれも3本脚。


見ていくうちに、脚3本だなーと思ったら、これはデンマークの椅子の特徴だそう。
もともと農村地区の家屋の石畳の敷かれた土間に座る際、安定感を持てるように3本足の椅子が伝統的に多く、そこ参考にしたのではないか、と。4本足より安定感があるそうだ。
そういう実用性や伝統からデザインに昇華させていく過程が素晴らし人だったのだろう。

このシリーズが1番惹かれた
こちらは座れない

椅子に対する憧れが強いんじゃないか

思えば私達の民族は、本格的に椅子に座る生活を始めて80年ぐらいしか経ってない。戦後もしばらく床や畳にちゃぶ台の家庭がスタンダードな訳で。2020年以降でも某アニメではちゃぶ台で一家団欒の様子が毎週日曜6時半に未だに放送されているし、コタツ人気も根強い。
きっと椅子に対して、単なる家具以上の憧れがあると思う。
机じゃなくて、椅子。

ここ数年で3〜4回目の椅子特集の展覧会が開かれている。

2022年 ジャン・プルーヴェ展 東京都現代美術館

2022年 フィン・ユールとデンマークの椅子 東京都美術館

https://www.tobikan.jp/exhibition/2022_finnjuhl.html

2023年 TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展


2024年
 アブソリュート・チェアーズ さいたま近代美術館

椅子だけではないけど、倉俣史朗のミス・ブランチもファンが多いだろう。あれも椅子。
2024年 倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙

ざっと並べてみた。どの展示も足を運んだが、渾身の企画だった。そして座れるコーナーがあって楽しかった。

そう、椅子って楽しい。

座る、という時に長い間、体を屈めて床面に尻を付けていた民族だ。
それが椅子という家具に体を預けることが「座る」になる、という憧れと楽しさ。
公共の場でも良さげな椅子が開放されているとつい座りに行ってしまう。

そういう憧れの眼差しに対して、今回の会場ではシンプルに並べて見せる、という会場構成が面白かった。
ちょっとしたショールームの様相でもあった。
それがリアル、なのか。
(欲をいうともう少し引いて見られたりするスペースが欲しかったが)

あまり、日本では馴染のなかった作家だが、国立近代にある渡辺力のヒモ椅子の原型のようなものもあるし、これをきっかけに専門家からの認知度からもっと一般に広く知られるようになるのだろう。

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