見出し画像

【マスター オブ メタル】松本市美術館 生誕150年/没後70年 金工の巨匠 香取秀真展 

今年見た作品の中に忘れられない作品がある。
5月に千葉県立美術館で見た「香取秀真作・鳩香炉」である。

君だよ、君
はぁ〜御御足。というか首回りの紋様どうしたの。
半開きのクチバシ!



なんかもうポケモン工芸とかそういうの飛び越えてるというか創始なんじゃ無いかと思えるぐらいの作品。


鳩のパワーが凄かった。

香取秀真の出身地、千葉県立美術館や佐倉市などを中心に作品が所蔵がされている。

ある日、美術手帖のストーリーズに急に鳩香炉の画像が投稿された。
あ!これ!あの鳩!なぜ!?

なんと松本市美術館で香取秀真の展覧会があるというではないか。
え、千葉県立美術館じゃないの?なぜ松本?!思ったら松本にもゆかりのある人物だったとのこと。

巡回あるのかな?いや、今は情報ないな。
…松本なら日帰りでいける。

行く。あの鳩をもう一度年内に松本で見る!

という訳で出発である。

(これで今年度の有休を全消化した!来年もバシバシ休む。うちのチームはあとチーフが残り2〜3日消化すれば全員消化達成かな。)

あずさ1号で松本市美術館へ


前の週に福島へ行った時は冬用のコートが要らなかったが、この1週間でグッと冷えた。松本の街もシンと冷え込んでいる。

車窓から紅葉の山々。
見ようと張り切ると見れないのが紅葉。
今回は色付いた山々の中をあずさが走り抜ける最高の車窓だった。



到着。
松本市美術館は2回目の訪問。
松本市美術館というよりこれもう草間彌生美術館と言われてもおかしく無い外観…

バーン


ギョッとした
ドット



中庭は保育園のお散歩コースなのか子供達がキャッキャと遊んでいた。良いなー。
草間さんの作品を目の前に「怪獣〜」とか言われてたけど。うん、まぁそうなるよね。

かいじゅう…


いつぐらいでこの怪獣を草間彌生さんの作品と認識するのだろうか。

少し目立ちにくいところにある。

早速、香取秀真展

これポスターデザインめっちゃカッコいいぞ。

Master of metalwork



マスター オブ メタルワーク!!!

かっこいいな!

そして鳩香炉推しじゃないか。
そうだよね、やっぱり推してくれるよね。

なお、展示室内は撮影禁止のため、作品の写真はない。以前、千葉県立美術館の時は鳩香炉撮れたのでその写真を交えつつ。

展示室は2階
やはり、デザインが良い

展示概要

近代工芸史に大きな足跡を残した金工作家、香取秀真(かとり・ほつま)。秀真は千葉県に生まれ、1892年に東京美術学校に入学します。同校鋳金本科を卒業後は、多くの展覧会で受賞を重ね、鋳金家として活躍します。その作風は、高度な伝統的技術を身に付け、東洋や日本の古典の紋様や形に基づきながらも時代感覚を取り入れ、実用を重視したものでした。
多くの後進を育てるとともに工芸界全体の発展に尽力し、帝展に美術工芸部門を設置する運動では、中心的な役割を果たしました。さらに金工の研究を精力的に行い、それは日本金工史の原点とも言える仕事となりました。これらの功績から、1953年に工芸家として初の文化勲章を受章しています。また、正岡子規門下のアララギ派の歌人としても知られ、多方面で活躍しました。
秀真は、妻が現在の長野県塩尻市の出身であったことから松本へ訪れる機会も多く、1944年から約3年間は松本市郊外へ疎開していました。その間、疎開先の家人や松本の文人たちと温かな交流を持ち、戦後も松本市内の寺院の梵鐘を作るなど、関係は途切れることなく続きました。
生誕150年、没後70年という記念のとき、ゆかりの地・松本に珠玉の作品が一堂に会します。

松本市美術館


展示は東京美術学校時代の作品からおおよそ時系列で見ていくことができる。
卒業制作作品が東京藝大に所蔵されているところからみると、学生時代から評価があったのだろう。

自身の制作だけでなく、金工の技術、歴史研究も重ね、著者もある、というのがまた異色。
後に金工作家だけで生涯困窮しなかったポイントでもある。そして歌人としての顔もある。当時のマルチタレントタイプかも。
(それも卒業後直ぐは作家で身を立てようとして苦しい時期があったからこそ、学びが身を助け、その後教員職に就く意味も見出せたのかもしれないが)

作品
3つ足の器があったがその足の部分の角度が良い。見ているだけで安定感を感じるし、しかしどこかユーモラス。ガニ股の状態といえばよいのか。
ちょっとの滑稽さに親近感が湧く。それは工芸を美術の中に含む主張をしつつでもどこかに「生活に密接なのもこそ工芸」という考えがあり、気取りすぎない作品につながったのかもしれない、と思った。
華奢で美しいだけではなく、多少滑稽でも地面をしっかりと掴む踏ん張った形の方が安定した使い方が出来るのかも知れない。

このウサギの踵が好き
壁と合わせたフラッグ



近代金工では同じ佐倉市出身の津田信夫や、无型(超前衛。宣誓文が過激。ほぼ脅迫状)から語られる事が多かったようで、いわゆる古典派の香取秀真が現代までなかなかスポットが当たらなかった。

しかし地元、千葉県立美術館や佐倉市美術館、松本の有志の方々のおかげでこうして見てその生涯を追うことができる程の作品と資料が残っている。ありがたいことだ。

図録とグッズ

なにより、あの鳩香炉が推されていて嬉しい。
グッズ化もされていた。

松本市内の菓子店の銘菓がこの鳩箱の中に…
鳩の配置が絶妙
か、買うわ。図案化された鳩香炉…誰が作ったんや…
素敵な包装紙。

半年前には想像できなかったけど、ブレイクということでよいかな?鳩香炉、グッズ化…
まんまと財布の紐が緩んだ。散財である。

松本市美術館 他館内

チケット売り場。
3階スペース。奥が図書館
こちらが常設展入り口
前回来た時は次男から「お蕎麦屋さんみたいダネ」と言われた。
草間彌生コーナー
バーン

父子共作の釣り鐘


さて、松本市内に香取秀真とその息子・香取正彦(この方は津田信夫に学び、後に広島の平和の鐘を作った人。人間国宝)が作った釣鐘のあるお寺が何軒かあるそうだ。
これは戦時中に金属提供でお寺の釣鐘が接収されてしまい、戦後、松本の寺院がゆかりある作家である秀真に依頼したことが始まりらしい。
平和を祈念して秀真と正彦の親子プロジェクトだった。
松本市美術館から歩いて行ける場所にその釣鐘があるお寺があったので足を伸ばしてみた。


寺院裏手からひょいっと覗いてみた。

お、おう…

保育園と一体になっていた。

だいぶ手前に柵があるし、うーん、ここまでしか近づけないかなー。
一旦ぐるっと回って正面の参道から覗いてみたらそのタイミングで園児さん達が園庭というか釣鐘の周りでダイナミックに遊び始めていた。

参道側から

あんまり覗いてるとお迎えの保護者にしては無理ある年齢だし、不審者になってしまうので戻ろうとした。

(賑やかな子供達に囲まれてなんとも良い風景ではないか。彼ら二人が望んだ風景なのではないだろうか。それが知れて良かった…)
と思った時、
「釣鐘の見学ですか〜?どうぞー!今、なんか展示してるんですよね?」と文字通り「園児を小脇に抱えた」先生(笑)が声をかけてくれた。
ひゃーありがたい!お言葉に甘えて柵の中に入らせてもらった。

側面から。つるりとした見た目。
どんな音がするのでしょうかね。
なかなか物資の少ない時代によくぞ。


そして…この風景。

凹んだヤカンが絶妙。
いつも釣鐘の周りでおままごとしてるんだね。


わかる。
私もお寺の幼稚園に通ってた。釣鐘の直ぐ脇に砂場があって、カップに入れた砂を釣鐘の所に型抜きして並べてたよ。こんな風に。
生活と切り離されてないよね。

なんとも温かい気持ちになって、先生にお礼を言い、賑やかな声が響くお寺を背にした。

なんで千葉県立美術館ではなく、松本市美術館で個展なんだろう、と最初は思っていたけれど、この釣鐘の光景を見て、あぁ、ここで展覧会が開かれて良かったんだな、と思った。

松本の街、食べ歩き。

美味しいものがいっぱいの街なので、美味しさ伝えたいのだが、食に関してはどうもうまく文章に残せて無い。写真撮るより先に食べ始めてたりもしょっちゅう。
砂糖子さんとかしえさんみたいな、「本当に美味しい!って食べてるんだろうな」というのが伝わる文章がいつか書けたら良いのにな、と思いつつ。
「美味しい」「旨い!」二言以外の奥行きが増えてない。語彙力とは。

しえさんのクスクスしてしまうけど美味しそうな報告書

砂糖子さんの松本グルメ。美味しいものアンテナが安定。

御二方の文章はいつ読んでも胃袋にグッとくる。
憧れつつ、私は私の今回の記録をば。

松本駅前 ムラタ
古いパン屋に弱い。

明治40年創業!


信州りんごアップルパイと松本市美術館のカフェにてテイクアウトでカフェラテ。カメラロールを辿ってもアップルパイがなかった。
おかしいな。
撮る前にむしゃむしゃ平らげてしまった。
しょっぱなからやらかした例。

彌生ベンチにて


小木曽製麺 みよ田 松本パルコ店
かき揚げそば

麺が見えない


かなり香ばしい大判かき揚げである。えび、ねぎ、ねぎ、えびという感じでザクザク出てくる。そして少しめんつゆが濃い。
やはりここはぶっかけではなく、ざるそばタイプの方が味の調節がしやすいかもしれない。麺は相変わらず旨い。長野に行ったら小木曽製麺の麺を食べて帰らないと損した気分になるぐらい好き。
駅前の立ち食いそばもクオリティ高い。

カフェ・ラーチ
ブラブラ歩いた路地にあったカフェ。

ポツンとな。


紅茶とタルトのセットがちょうど良かった。本当はコーヒーが推しのカフェなのかもだけど、お昼のかき揚げ蕎麦が意外と重めだったので油分のあるコーヒーより紅茶を。

洋梨のタルト。ちょうど良い大きさ。


タルトは食べるんですけどね。
洋梨の食感とタルト生地の食感がよい。

恒例の図録読み始めてガサゴソしてしまった。
こういうお店では落ち着かないといけないなーと。思いつつ、ガサゴソしてしまう。

見事に平らげました

ハンカチ付き図録を購入したが、これがまた内容が面白すぎて、ここのカフェと帰りの電車内で読みふけってしまった。

伊東豊雄氏の建築。
夫が食べてた地元の味。
「アンパン、メロンパン、牛乳パン」というノリだったそう。まじかよ。給食のパンを作ってたメーカーや、高校の学食でお世話になったメーカーも。
夫へのお土産にガチャしてみたが、ゆかりのあったメーカーのアクキーは当たらず。
でもどれも良い感じ。
情報量が多い開運堂さん。


街歩きが楽しい松本。
今度は泊まりで松本芸術祭の時期などを狙いたい。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集