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【曖昧なリンゴ】雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館

24年夏季のサイドコアの展示が面白かったので、次期はどんな展示かな?とチェックしていたワタリウム美術館。

現代美術家の雨宮庸介氏の個展の開催告知ポスターに惹かれたので見てきた。
溶けている、というか歪んだ形のリンゴのポスター。

このビジュアル

開催概要はこちら

この展覧会は、アーティスト雨宮庸介の活動の初期から現在までを見通せる展覧会です。2000年初頭の作品から始まり、「溶けたりんごの彫刻」や「石巻13分」の記録映像、「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」のペーパーなどを含み、さらに最新作として今回の設営期間にワタリウム美術館で撮影するVRが展示され、それは「話す、語りかける」「イメージを絵の具で描く」「歌や楽器やダンス的要素」など新たなアート体験を提供します。さらに会期中の毎週土曜日夕方、「人生最終作のための公開練習」が行われ、観客が雨宮の制作現場に立ち合うことが出来ます。

ワタリウム美術館公式サイトより

どこかで作品を見たことがあっただろうか?と思ったけれど自分の記憶の中にはなかった。今回がほぼ初対面、ということになる。

2階の作品展示、3階の体験展示、4階の映像作品を順に見ていく訳だが、3階の体験展示は休日だと待ち時間が発生するらしい。ゆっくり見にいくなら平日が良いかもしれない。

1番気に入った作品はメインビジュアルにもなったりんごの彫刻。

重さが気になる。
食卓のような。
素材は変遷している。
カラーで撮ったのだが。

鈴木康広氏にもリンゴの作品があったが、リンゴに魅せられる作家は多いのか。
そもそも最近はコンピュータの総称ともみなされてるし、人間が何かひっかかる果物なのだろうか。禁断の果実もりんごと間違われたりして壮大な勘違いを人類は続けていたりするしな。

さて雨宮氏のリンゴだか、解説が面白かった。自作のリンゴをドイツの方へ見せたら「全然リンゴらしさがない、こんなに赤く無いし大きく無い」と言われたそうだ。
日本で私たちがよく見ている赤いリンゴに対して、それが基準と思いがちだが、環境が変わればそんな基準なんていとも簡単に崩れ去る。環境が違えば育つ作物の様子も変わるし考えてみたら当たり前か。

例えば絵画の試験で「リンゴを林檎らしく描きなさい」という課題が出たら。
今までの人生で見たものだけからしか「らしさ」を思い浮かべることができない。

それぞれ抽出する「らしさ」が違うかもしれない。大きさだったり、色だったり形だったり。

らしさってすごい曖昧なんだな。

並べられたリンゴの彫刻らしきものを見て改めて「曖昧」な中で生活しているのだな、と思った。

曖昧な海、という言葉が浮かんできたけどそれは赤瀬川原平さんの作品名だったな。

余談だが。
2階の展示室は非常に感じよくリンゴが並べられている。
会場でカップルが撮影会をしていた。
その時は滑稽に見えたのと、あまり美術館で「そういこと」をしている人と遭遇したことが無かったのでギョッとしてしまったが、あのカップルのことさえ曖昧なのだ。

若いかもしれないし、そう見えただけで自分と同世代かもしれない。
男女だと思ったけどそうじゃ無いかもしれない。
そもそもカップルじゃ無いかもしれない。
作品と対話した上での行動かもしれない。逆にそっちがマナーなのか?

あー。

如何によく分からない基準や知識で生活してるんだな、というのが浮き彫りになった展示だった。


出口のない部屋
ワタリウム4階からの眺め
リンゴ、途中。


地下のオンサンデーズのカフェにて。
ここのカフェオレはうまい。

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